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2010.04.19 *Mon*

王子様の侍従 (前)


カエルがぼくに向かって言う。

「助けてくれ」
「どうしたの?」
「苦しいんだ」
「大丈夫なの?」
「・・・・今の姿は自分じゃないんだ」
「本当の姿は何なの?」
「わからない」
「わからない?」
「わからないから苦しいんだ。苦しくて苦しくて、息もできない」
「ぼくはどうしたらいいの?」
「・・・・・何もできない」
「ぼくは何もできないの?」
「できない・・・・」

そう言ってカエルはこの世の終わりみたいな悲しい顔をして、ドボンと池に飛び込んで行った。

「待って~~。ぼくに、ぼくに、何かできないの~~」

ぼくは池の中に追っていってあげたいけど、その勇気がなくて・・・・。
ぼくは裕樹って名前なのに、本当に勇気がなくって・・・。
ただただ池の縁で、カエルの飛び込んだあとの、水輪が広がっていくのを見るしかできない。

「ごめん。ごめんね。ごめん、ごめん・・・・・」

そう言い続けながら、ぼくはだんだんだんだん息が苦しくなってきて・・・・。



「うわわわわあーーーっ!」

布団を蹴散らし、飛び起きてしまった。


はあはあはあ。
まるで全速力で走ったように息が切れる。
ここんとこ、毎夜のようにこんな夢で目が覚める。
ぼくはどこか病気なんだろうか・・・。

時計を見たら、まだ夜の1時で、もう一度寝るしかないような時間だった。
とりあえずカラカラになった喉を潤すために、面倒だけど一階に行って何か飲もうと、ぼくはベッドから下りて、一階へと階段を下りる。

ダイニング辺りから、うっすらと明かりがもれているのに気づく。
こんな夜中にまだ誰か起きているのかな?
そう思いながら、ぼくも台所に行きたいから、その明かりのダイニングの方に歩いて行く。


「琴子。琴子、風邪ひくぞ。起きろよ」


ダイニングテーブルで、思いっきり突っ伏して寝てしまっている琴子が目に入る。
その横には琴子に声をかけて起こそうとするお兄ちゃん。
テーブルの上には、数本のビールの空き缶が転がっている。
きっと酔っぱらって、完全に眠ってしまった琴子。バカなやつ。
大好きなお兄ちゃんの声にも、何の反応も示さない。


実は、ここ最近の琴子は絶不調だ。
そりゃそうだよな、大好きなお兄ちゃんが他の女の人と婚約してしまったんだから・・・。


今までの琴子のお兄ちゃんへの好き好き攻撃は、本当に目に余るものがあった。
でも、ここにきて・・・意外にも琴子はいつものお兄ちゃんに向けるパワーがなくなってきている気がする。
特にこの前、その婚約者が家に来てからは・・・琴子は本当におとなしくなってしまった。
はじめはあてつけかと思ってた金之助とのデートも、まだ続いているみたいだし。
まさかと思うけど、お兄ちゃんのことあきらめてしまったんだろうか?

それはお兄ちゃんの婚約者が完璧だったから?
お兄ちゃんの状況をしっかりわかっているから?
それとも・・・・・・もう絶対お兄ちゃんが自分のことを好きになるなんてことはないと思っているんだろうか・・・・。

正直、いつもお兄ちゃんに迷惑かけるくらい追い回して、喚いていた琴子より、こんな何も言わず、ただ自暴自棄になっている琴子は、ぼくにはもっともっと醜態でしかない。
イライラする。


「・・・・・・・」

ガタン。

「・・・・裕樹」

お兄ちゃんがゆっくりとぼくの方を振り返る。

「あ、お、お兄ちゃん・・・・」

ぼくはなんだか腰ががくんと落ちるような気がして、足を思わず一歩踏み出して、床を大きく鳴らしてしまっていた。


「なに?眠れないの?」
「う、うん・・・目が覚めて。喉が渇いたから、水を飲みに・・・。琴子のやつ、こんなところで眠っちゃったんだ」
「ああ。こいつ、全然起きない」
「相変わらず、バカなやつ」
「裕樹悪いけど、おれこいつ部屋まで運ぶから、そこのこいつの飲んだ空き缶捨てておいてくれないか。朝、おふくろが見つけたらまたうるさいし」
「う、うん」


そう言うとお兄ちゃんは、机で髪を広げて寝ている琴子の腕を自分の首にまきつけて、そのまま琴子を抱き上げた。
これは・・・いわゆる・・・お姫様だっこってやつで・・・ぼ、ぼくは琴子を持ち上げるお兄ちゃんの力に、なんだか大人の男の人だなと改めて思ったりなんかして・・・・なぜだか顔が赤くなってしまった・・・。

ぼくはすぐに台所に向かい、テーブルの上に置いてあった空き缶を捨てて、カラカラの喉を潤すために水をぐいっと一気飲みほした。
そして、ぼくもお兄ちゃんのあとを追いかけて階段を上がる。

今日の琴子のパジャマは上着の丈がすごく長くて、お兄ちゃんの後ろからみたら、まるで童話の中のドレスを着たお姫様が本当に抱っこされているみたいだ。
こうやって見ると、いつもは月とスッポンみたいで、琴子はお兄ちゃんには到底似つかわしくないやつだと思っていたけど・・・、なんだか意外にもお似合いっていうか、今の二人は本当に童話の中に出てくる王子様、お姫様にみたいにしっくりきている・・・。

・・・も、もちろん、琴子はつけあがるから、こんなことあいつには絶対言わないけどなっ。

お兄ちゃんが二階まで全部あがりきったので、ぼくは気を利かして、先回りして琴子の部屋のドアを開けてあげた。

「ありがとう」

お兄ちゃんがそう言って、琴子の部屋に入っていく。
そして、ゆっくりと琴子のベッドに琴子を置くと、琴子の髪の毛がばさ~っとベッドに広がった。


「裕樹、琴子には言うなよ」
「へ?・・・なにを?」
「おれが、ここに運んだこととか」
「う、うん・・・」
「また、変に勘違いされても困るからな」
「そうだね・・・でも・・・」
「なに?」
「・・・ううん・・・・なんでも・・・」

なぜ勘違いされたら困るのだろうと思った。
勘違いってどういうこと?
どういう風に勘違いされるっていうの?
事実はどうしようもないんじゃ・・・・・。

―だったらなぜ?

そうお兄ちゃんに聞きたかったが、ぼくはやめた。


「お兄ちゃん」
「ん?」
「お兄ちゃんは・・・結婚したら、絶対浮気とかしない?」
「は?なんだよ。なんでそんなこと?」

琴子の部屋を出て、一緒に部屋に戻る時にぼくが聞いたことにお兄ちゃんは笑って答える。

「お兄ちゃんは浮気とかしないよね?」
「あたりまえだろ。なんでおれが」

そう言ってお兄ちゃんはまた笑って、ぼくの頭をぽんぽんと叩いて、そして一緒に部屋に戻った。


お兄ちゃんじゃない―――。


今、ここにいるのはお兄ちゃんじゃない。
このお兄ちゃんは、嘘をついている。
ぼくの尊敬する天才のお兄ちゃんは、嘘をつくことなんてことがなかった。
じゃあ、誰?
今、ぼくの隣にいるのは誰?



そのあとも布団に入るとまた、あいつが夢の中に出てきた。
じっと悲しそうな目でぼくを見て、そして言う。


「さがしているんだ」
「なにを?」
「おれにぴったりの人を・・・」
「沙穂子さんなんだろ?」
「・・・・」
「この前、自分で似合いの女性だって言ってたじゃないか」
「・・・・・・」

そいつはなぜかため息をついて、そしてまたチャポンと池の中に飛び込んでいなくなってしまった。
しばらくその水輪をまたぼくはじっと見ていて、そしてふと気づいた。


ぼくはどうしてあいつにあんなことを言ってしまったんだろう。
あいつはカエルで、お兄ちゃんとは違うのに・・・。




**********

原作の隙間のようでありながら、実は捏造部分が多いような話です。
初めに注意書きを入れようかとかなり迷いましたが、完全に捏造でもないなと思い・・・とりあえずあとがきにてこうして書かせてもらいました。

後半も原作のイメージを大切になさる方は、閲覧にご注意下さい。


COMMENT

拍手コメントありがとうございます(*^_^*)
繭さま

こんにちは。そうです、これがドタバタ動物園のあとに書いた暗めのお話です(^_^;)裕樹目線にすると、それほどどんよりはしないかと思うのですが、もう原作では本当に切なくて、読者まで伝わってくるキリキリ感ですから・・・私も直接的には触れることのできない分野だと思い、今回は裕樹くんに「中和」的な役割で書かせてもらいました。確かに原作で、沙穂子さんを見る裕樹の目は冷たかったですよね。後半ラストは、心苦しいまま終わらないように(というか、私がそれだときついので(>_<))希望もてるようになんとかしたつもりなんで、またよろしくお願いします~♪


ぴくもんさま

こんにちは。新しい感じがしてくれました?私は、自分では「相変わらずだな・・・」と思っていたので(^^;)、そう思ってくれてうれしいです♪裕樹はまだ子どもで、大きなことはできないけど、でも二人の心を一番知っていてもやもやしていたのではないだろうかと思い、今回の話に結びつけました。直樹は初め「白鳥」にしようかなと思ってたのですが(姿はそれが似合ってるかなと)、でもしゃべる「白鳥」というとどうしても頭に浮かぶアニメがあり(ひ~、年がばれる!!笑)、あとあと「カエル」の方が都合のいい結びつきもできそうなんで、「カエル」に変更しました。あはは、ぴくもんさんの直樹批評がおかしくって!!(笑)確かにそれ、合ってると思います。また後半も引き続き、大きな展開はないですが(原作追ってるので(^^;))よろしくお願いします~♪
by chan-BB
2010/04/21(水) 13:40 [Edit
騙されないぞぉ~
   こんにちは
裕樹だからこそ・・・二人の気持ちを見抜けるんだよなぁ・・・。誤魔化しは許せないんだろうなぁ・・・二人のの思いも仲も マジかで見てた裕樹だからこそ。分かる想い・・・

 直樹の思いあるkissの行動からのその後・・・琴子の事を馬鹿にしつつも認めてるから 二人のらしくない言動に ムカつくんだろうなぁ・・・ 
 
 浮気・・・裕樹には琴子以外の婚約自体が そもそもの 浮気なんでしょうねぇ・・・心に琴子隠してるの 見え見えなのにぃねぇ。
直樹の琴子に対しての配慮に愛感じちゃう・・・。触れたかったのかな・・・
 裕樹よくぞ言った・・・エライ ホメホメ
by 吉キチ
2010/11/11(木) 12:13 [Edit

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こんにちは。
素敵なイタキスの二次創作をたくさん読ませていただき、ついつい自身も二次創作なるものを書いてしまいました。
ここは、私の超個人的な妄想話置き場です。

原作者様、出版社様等とは一切関係ございません。
私の勝手な妄想話であるため、原作のイメージを大切にされる方、二次創作が苦手な方、二次創作が理解できない方は、ご遠慮ください。
また、ブログ内の全ての文章・いただきものを含む画像等の無断転載・転用を固くお断りします。

まだまだ拙い文章しか書けませんが、以上の注意をご理解いただき、読んでもいいかな~と思われた方のみ、ご閲覧下さい。
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