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2010.04.06 *Tue*

―9分― (後)


急に展開された状況に、琴子は思考が追いつかず、頭の中で何を優先したらいいのかもわからなくなる。
琴子は覗き込まれた直樹の瞳の中に映る、ちょっと不安そうな顔の自分を見つめて、こんな思いもがけない時間を得ることができたのに、何で自分は不安そうな顔をしているのだろうと思った。


「ねえ入江くん・・・」

「ん?」

「この9分が過ぎて、あたしたちまた離れて暮らすと、次会えるのは、何分後なの?何時間後?何日後なの?」

直樹もこの思いがけない琴子の問いに一瞬頭の中で、思考が止まりそうになった。
なぜなら、まず次に会う日がいつなのか、何も決めていない。いや、わからないこと。
それを問われたところで、何を明確に答えられるのか。


「とりあえず・・・また何ヶ月かは会えないだろうな。おれもいろいろ忙しいし。おまえだって、そんなしょっちゅうこっちに来る時間ないだろ」

「・・・・」

「時間で言ったら・・・・、あと90000分以上は確かか?」

「90000分!!!」

琴子は絶叫する。


「つまり今は90000分の中の9分。この瞬間は今の離れて暮らしているおれたちにとって、1/10000分、10000分に一回しか訪れない時間ってことだな」

「な、なんか難しくてわかりにくいけど・・・それってすごく貴重な時間ってことだよね・・・」

「まあ、そういうこと」



本当にすごい時間ができたもんだと、直樹は呆れながらも、この成り行きに感心している。
次いつ会えるかわからないから、本当に少しでも一緒にいたいと思うのは琴子だけでなく、実は直樹も一緒だった。
むしろずっと神戸で一人暮らししている直樹にとって、琴子が東京に帰ると、その部屋の静寂さは琴子のおかれている状況よりももっと過酷なものだったかもしれない。
ずるずると考えもなしに、琴子は直樹との時間を延ばそう延ばそうとするが、でもどこかでそれを断ち切らないと前に進むことができない。
直樹はそれをわかっていて、どこか自己規制していたところがある。

それなのにマンションで別れるはずが、新神戸の改札口まで来てしまい、そして琴子に入場券を買われてプラットホームまで上がってしまい、そして琴子の失態のためにとうとう新幹線の中にまで・・・・・。
これは、偶然の産物か・・・、いやどこかで自分の意志や希望が、無意識に働いたのかもしれないと直樹は思った。


「ぷっ!」

そう思うと、自分のおかれた状況が、自分が作ってしまった状況が、あまりに滑稽過ぎて直樹は笑えてきた。
必死で断ち切ろうとしながら、結局は新幹線にまで乗ってしまった自分。


(箍(たが)が外れてしまった――――)


「何、笑ってるの?」

琴子が直樹の胸に軽く手を置いて問いかけるやいなや、琴子の手は直樹に掴まれ、ぐいっと身体ごと引き寄せられる。


「んん・・・」

急に直樹に唇を塞がれ、琴子は思わず目をまん丸にして、身体を強ばらせた。
琴子は背中に手を回され、身体と身体が吸い付くように直樹に密着させられる。
そんないきなりの強引な行為。
初めはびっくりして思わず直樹の胸を押して、この状況から抜けだそうとした琴子だが、唇から伝わる情熱にだんだん心までが侵されていって、ゆっくりと唇を通して、身体が和らいでいくのがわかる。
そして次第に大きく見開いていた琴子の目も、ゆっくりと閉じられていった。

直樹の右手は琴子の頬に添えられ、親指で口元を少しきゅっと押すと、琴子の小さな唇が少し開く。
その少し開いた琴子の唇に、直樹は容赦なく侵入し、その口元にある指を器用に動かし、琴子の顎をも回転させるように何度も角度を替えさせ、執拗に咥内を探索する。

直樹の激しい攻めに、がたっと琴子の膝が崩れ落ちそうになる。
それを瞬時に直樹が自分の膝ですくい取り、そして支える。
琴子もまた、直樹の服をぎゅっと掴んで、倒れそうな衝動をなんとか保たせる。

お互い少し息苦しくなり少し唇が離れた時に、琴子は瞑っていた目をゆっくりと少しだけ開けた。
目の前にやはり少しだけ目を開けた直樹の顔があり、少し荒くなった直樹の息が琴子の唇に熱くあたってるのがわかる。


「・・・人前でベタベタするの嫌だって・・・あんなに言ってたのに///」

「おまえが、箍を外しちまったんだ・・・」

「た、たが・・??何それ?」

「それにここは個室だ。人前じゃない」

直樹は片方の眉をわざとくいっと上げて、琴子に目配せした。

「ぷぷっ。個室なんだ」

「そう、個室」

「誰も来ない?」


唇が触れるか触れないくらいの至近距離で、二人はお互いに聞こえるほどの声で会話する。
直樹は右手をカーテンに伸ばし、端の方の少し開いたところを確認するかのように、もっとぎゅっと閉めて、琴子の背中に回した左手をまた力を入れて引き寄せる。


「絶対誰も来ない」


そう言って直樹は少し笑みを浮かべた琴子の唇をまた自分の唇で塞いだ。

本当は個室なんかになり得るものではないことは直樹にはしっかりわかっている。
洗面所のカーテンはせいぜい肩より上の部分くらいしか隠せることができない短いもの。
外から見れば、肩から下の部分は廊下から誰にでも容易に見ることができる。

今、外からこの洗面所を見れば、一組の男女が向き合って、男の脚の間に女が入りこみ、男の脚が女の膝をすくい上げるようにして絡めて立っているはず。

そんな状況でカーテンを開ける者がいようか。



――まもなく新大阪です


車内アナウンスが流れ出す。


「・・・入江くん・・・もう新大阪・・・」

ぎゅっと掴んでいた直樹の服から手を外し、琴子が眉毛を少し下げて呟く。

「まだ9分たってない」

それでも直樹は少しの躊躇いもなく、再び琴子をぎゅっと抱き寄せ、吸い寄せられるように琴子の唇にキスを落とす。



―――今日も新幹線をご利用いただき、ありがとうございます



まだ直樹は琴子から離れない。
まだ直樹は琴子を放さない。

車内アナウンスが終わり、しばらくしてやっと、二人の唇がゆっくりと離れる。
少し目を合わせる二人だが、そこに会話はない。

直樹が琴子の唇に指を置いて、その唇を指で軽く拭い、そして直樹の唇もその自身の指で、軽く拭った。



「9分終わり」


シャーーーー。

直樹は勢いよく洗面所のカーテンを開けた。
それと同時に、新幹線のドアが開く音がした。


「次、また90000分過ぎたころにな!」

さっきの激しさはいつの間にか無くなり、穏やかな表情で直樹は笑う。
そしてそのまま直樹は、洗面所から走って出て行ってしまった――――。




新幹線の発車を知らせるアナウンスとチャイムが鳴り、そして新幹線のドアが閉まる音がする――。

ゆっくりとまた、新幹線が動き出すのが、振動を通して琴子の身体に伝わってきた。
琴子は、その振動に反応して、洗面所の壁に背中をついて、そのままへたへたへたと力が抜けて座り込んでしまった・・・。
近くに置いていた荷物に手をやり、しばらくぼおーーっと目も虚ろに惚ける。
しばらくして、ふと廊下の方に目をやると、何人かの足が見えて、無意識にその足をたどって視線を上の方にやった。

そこには、何人かの人間が立っていて、にやにやと少し赤い顔をしながら、琴子を見下ろしているのが見えた。



「////!」


琴子は慌てて荷物を持ち上げて、勢いよく立ち上がると、洗面所から飛び出した。
どこを歩いていいかわからないが、とりあえずあてなく、車内を歩き続ける。


(もう、恥ずかしい!///入江くんのせいで、あたし一人残されて、恥ずかしいよ!!///)


直樹の顔を思い浮かべ、その顔に向かって文句を言いながら琴子は歩いて行く。


ちょうどその時、前方から女性の車掌らしき人が歩いて来るのが琴子の目に留まった。

「あ、すみません」

思わずその車掌を呼び止めて、自分の新幹線のチケットを見せる琴子。
軽く今までのいきさつを車掌に話す。

「大丈夫ですよ。今、通ってきたら自由席も空いてましたから、自由席に移られたらどうですか?」

優しい笑顔で若い女性の車掌は琴子に話してくれる。
思わず琴子もつられて笑顔になる。
琴子と同じくらいの年代の若い女性車掌に、琴子は妙に親近感を覚える。


「あの・・・車掌さんのお仕事楽しいですか?」

思わず琴子は、会ったばかりだというのに若い女性車掌という職業が気になり、尋ねてしまう。

「は?あ・・・はい。ずっとなりたかった職業なので、とても楽しいです」

「そうですか」

幸せそうにはっきりそう答える女性車掌に、琴子もなんだかすごく幸せな気分になる。


あたしは看護師になりたいんです。
だから今、東京で勉強してるんですよ。
入江くん・・・、あ、入江くんってあたしの旦那さまなんですけどね、今神戸でお医者さましてて、あたしたち離れて暮らしているんです・・・。
さっきまで久しぶりに一緒にいたんですけど・・・今度会えるのは、90000分以上たってからみたいなんですよ・・・。
そうなんです、もう気が遠くなるような時間ですよね。
もうそれ考えると、ちょっと凹んじゃって・・・。
でもでも!!さっき思いがけず神様からすごいプレゼントもらったんですよ!!
9分!!ふふふ///濃い~~9分でした~///
これって、10000分の1の時間なんだそうですよ。
え?意味わからない?・・・・そうですよね・・・意味わかんないですよね、あはは。



「あの・・・大丈夫です・・・か・・・?」

優しい車掌が琴子の瞳からぽろぽろと涙がこぼれ出すのを、心配そうに見つめる。


「だ、大丈夫です!!あたし、あたしも車掌さんみたいに、必ず夢を叶えますから!」


涙を流しながらも、パッと輝く笑顔の琴子に若い女性車掌も思わず笑みを浮かべる。


「がんばって下さい」

「はい!がんばります!」


そう言ってお互いなぜか敬礼しながら笑い合って、琴子の心もまた希望に満ちてきた。




**********

う~・・・・・ラストを本当に何度も変更してしまって・・・だんだん何がよかったのかわからなくなってしまいました(>_<)
初めは琴子をぽろぽろと泣かせて終わらせてたのですが、ちょっと可哀想になってきて・・・笑って終わらせたくて、こんな展開にしてしまいました。
そして、時間や確率のところは、いろんな状況や設定を考えると理論的(?)におかしいです。
すみません・・・そこは軽く、「感覚」で読んでやってください・・・(^_^;)

さて!!
次はリレー作品ですが、書けるのか、書く時間あるのか・・・と不安だったのですが思いがけず!!すらすらと書けて(笑)、あとは見直し段階までやってきました(^^)/

次はリレー作品で、またよろしくお願いします~♪


COMMENT

拍手コメントありがとうございます(*^_^*)
藤夏さま

こんばんは。全然個室になっていない、中途半端なカーテン。「頭隠して尻隠さず」の典型的なパターンですよね(笑)!って・・・直樹もそれはわかっていながら、そう言わせちゃった私です(^_^;)走り去ったあとの直樹の顔・・・いいですね!私も見てみたいです~♪琴子帰っちゃうと、多分直樹の方が環境の変化が大きいんだろうなと思い、ちょっとこんな突拍子もない大胆な直樹を書いてしまいました。ラストも本当にあれこれ変えてしまって・・・、でも藤夏さんにパワーを感じてもらって、私もパワーをいただきました(^^)/ありがとうございます♪


繭さま

こんばんは。琴子より、直樹の方がきちゃってました、今回は(^^;)結構新幹線のこの辺り(出入口、洗面所)には、カップルがいることが多いんですよ(私が見た時だけ?)。こそこそと意味深に話してたり、洗面所のカーテンが二組の脚が見えて閉まってたり(笑)。なんかそんなこと思いだして書いちゃいました・・・。でも、こんな大胆なカップルは見たことないですけどね(^^;)最後の琴子の涙に、とっても優しいコメントありがとうございます。なんだか癒されました(*^_^*)

by chan-BB
2010/04/07(水) 17:58 [Edit
拍手コメントありがとうございます(*^_^*)
ぴくもんさま

おはようございます。9分、ちょっと消化不良ですが、なんとか終わらせました。楽しんでいただいたみたいで、私もうれしいです(^^)ぴくもんさんの感想のお言葉がどれもすごく深くって、もうありがたくって仕方ありません。そうなんです、暴走気味の直樹、好きなんですよ私 ( ̄m ̄*) 気に入ってもらえて、感激です☆ちなみに、琴子によって情けなくみじめになる直樹も好きなんです ( ̄m ̄*)もっと恥をかけ~!みたいな・・・ ま、これは私くらいでしょうが(笑)失礼致しました。
by chan-BB
2010/04/08(木) 06:54 [Edit

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Author:千夜夢

こんにちは。
素敵なイタキスの二次創作をたくさん読ませていただき、ついつい自身も二次創作なるものを書いてしまいました。
ここは、私の超個人的な妄想話置き場です。

原作者様、出版社様等とは一切関係ございません。
私の勝手な妄想話であるため、原作のイメージを大切にされる方、二次創作が苦手な方、二次創作が理解できない方は、ご遠慮ください。
また、ブログ内の全ての文章・いただきものを含む画像等の無断転載・転用を固くお断りします。

まだまだ拙い文章しか書けませんが、以上の注意をご理解いただき、読んでもいいかな~と思われた方のみ、ご閲覧下さい。
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