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2010.03.23 *Tue*

The Gift of the Magi ~She is always walking ahead. ~(中)2/2


「The Gift of the Magi ~She is always walking ahead. ~(中)1/2」の続き「謝恩会」編です。(ほとんど番外編)って感じですが(^^;)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


謝恩会は、ロイヤルホテル、鳳凰の間だった。

この会場で琴子を妻として紹介した日が、つい最近のことのように思い出される。
結婚したばかりのあの頃は、まだ入籍さえもしてなくて、今、こうやって離れて暮らすようになるとは思ってもいなかった。
なんだか皮肉な場所だなと思いつつ、医学部と他学部も併せて、盛大に立食パーティーが開かれているこの会場に入る。


―入江

―入江が来たぞ


あちらこちらから、まるでおれがここに現れたのが信じられないといったような声が聞こえてくる。
正直、謝恩会なんてものに興味ないし、こんな派手な席に来たくはなかった。
しかし今日はおれは主席として、この場でスピーチをすることになっている。
そして、ただでさえ医学部に編入、そして休学、いろいろなことがあり、その度に手を尽くしてくださった教授には、せめてものあいさつをここでもしたかった。



「入江さん」

会場に入って、初めておれに声が掛けられる。

「船津」

おれが会場に入って初めて言葉を発したせいか、急にざわめいていた会場が水を打ったようにしーんと一瞬静まりかえった。

「なんだか・・・入江さんって、相変わらず影響力強いですよね。今日もこの会場入ってから、入江さんの噂ばっかりですよ」

船津がきょろきょろと周りを見回しながら、笑顔でおれに話掛けてくる。

「どんな噂?」

「え?ああ・・・いつものように根拠のない下世話な噂ですよ。でもこんな入江さんの噂話を大学で聞くのが最後だと思うと、なんだか寂しいですよね~」

「だから、どんな噂?」

「え・・ああ・・その・・・。また入江さんと琴子さんの話で・・・・、二人が思い出の講義室で激しく何時間も、キ、キ、キッスをしてたって・・・///」

「事実だ」

「そうですよね~、まさか・・・・ええっ!!?///」

ひどく驚いた船津は、飛び上がって、思わずめがねが鼻の下までずるっと下がってしまう。

「何時間もっていうのは、いつもの勝手な噂の一人歩きだな。せいぜい数十分くらいか?」

「す、す、す・・・キ、キ、キッスを数十分~~っ!!??///」

またひどく狼狽した船津は、大きくジェスチャーをして、今度はめがねを床にガシャンと落としてしまった。
船津はぶるぶると指を震わせながら、床に落ちためがねを拾おうとするが、なぜかうまくめがねがうまく掴めないらしく、何度も掴んでは落とし、掴んでは落とし・・・・・・・おい!めがねのレンズににひびが入っているぞ、船津。


「す、す、すごいですよね・・・どうやって数十分も息を止められるのか。ぼ、ぼ、僕には絶対無理です・・・」

ぷるぷるぷると指先を震わせながら、船津はやっとめがねを掴む。

こいつ・・・キスしたことねーな!?
我慢大会じゃないんだから、じっと唇合わせて息止めてるだけだと思ってるのか?

ぶつぶつ呟きながら、やっとひびの入っためがねを掛けた船津を放置して、おれは目的の場所へと一人向かった。



おれのスピーチも終わり、教授へのあいさつも終わった。
おれも近くにあった皿を取り、少し食事を摂る。
昼も食べていなかったので、ほんの少しの食事でも、かなり腹の足しになった気がする。
これでちょっとは、ここに来たかいもあったというもんだ。
そしておれはそろそろ、会場を後にしようと思っていた。

おれが会場に入ってからの好奇の目は、相変わらず続いていた。
でも、在学中に琴子と何かある度に、おふくろの変な張り紙がされる度に、こんな好奇の目には慣れているから、これ自体がおれの居心地を悪くしてるわけではない。


ただおれは、今、早く家に帰りたかった―――。




「入江」

皿を置いて、席を立とうとするおれに、ゼミの連中数人おれを呼び止める。

「あ、奥さんは連れてこなかったんだな」

その中の一人柿谷が、しらじらしくおれの周りを確認するかのように目線を配らせ、尋ねてくる。
おれが一人で会場に入って来るところをしっかり見てたくせにな。

「ああ、当たり前だろ。あいつは医学部に関係ないし」

「そ、そうだな。でも、寂しがってるんだろうな。奥さん、いつも入江と一緒にいたいみたいだし」

「まあな」

当たり前だろという顔で答えてやったら、柿谷は思わずぐっと息を飲んだ顔をした。

「入江、神戸の病院に勤務になったんだよな。奥さん、本当に寂しがるだろうな~」

そう言って、みんな顔を合わせて、にやにやとおれを見る。
ふ~~ん。
そういうことか・・・。
おれの反応が知りたいんだろ。
見たいんだろ。

まあ、その理由はだいたいわかってるけどな。
どうせ、昼間の講義室でのことを言いたいんだろ。
だったら、見てたってはっきり言えばいいものを。
それをおれに推測させて、おれを慌てさせたいのか?


「相原・・・いや、奥さん、かわいいよな。入江のことがいつまでも大好きって感じで」

また別のやつが、酔っているのか顔を紅潮させておれに聞いてくる。

かわいい?

思わず、その言葉に少しいらっとくる。
何をどう見て、そう言うんだ。
琴子の何を知って、そう言うんだ。


「入江、神戸の病院には奥さん、連れていかないのか?」

また柿谷のやつが、そんな話をふってくる。

「連れていかねーよ。あいつは、まだこっちで勉強すること残ってるし」

「寂しいだろ!?」

柿谷が寂しいって言えよ!とばかりの期待した顔で、おれを挑発するかのように問いかけてくる。
他の連中もにやにやしながら、おれの反応を期待する顔で見ている。

「別に」

「でも・・・、なあ。離れてると、気持ちも寂しいだろうけど、入江だって人肌も寂しいっていうか・・・」

そう言って、みんながまた顔を合わせて、くくくっと下世話に笑う。
いつもはおれをそんな嘲笑したように扱うことは決してない連中。
きっと、この謝恩会でのほろ酔い気分と、さっきおれたちのことを見たことへの優越感みたいなものがあるんだろう。
いつもうろたえることのないおれの、うろたえた様子がみたい。
「卒業式」ということもあって、何かそういうサプライズなことに期待でもしてるのか。


ちょっとはこの余興に乗ってやってもいいかと思いながらも、この連中のチラチラとおれを見るその顔が、まるで鬼の首を取ったかのように得意げで、なんだか無性に腹が立ってくる。


「そうだな。今までみたいに、やりたい時にやれねーのは残念だけど・・・。おれたち、高校の時から一緒に暮らしてるし、離れた方が次会う時、かえっていろいろと燃えそうで・・・・・ふっ、今から楽しみだな」

おれはまるで何か思い出したかのように、口元に手をやって意味ありげに笑ってやった。


「!!!!///」


ふん。
ざまーみろ。

一気に酔いが醒めたような惚けた顔をした連中。
これがおまえたちへの、おれからのはなむけの言葉だ。


そしておれは会場を出ようと、ゼミ生たちを後に歩き出した。


「あ」

ふとあることを思い出して、おれは足をとめる。

「柿谷」

「え、ええ?なに?」

おれにふいに名前を呼ばれて、さっきまで鬼の首を取ったかのように嘲笑してたやつが、急に慌て出す。
なんだか滑稽だなと思った。

「おまえ、実家、神戸だったよな」

「あ、ああ」

「これやるよ。春休みに帰る時に使えよ。指定の取り直しだけはしないとダメだけどな」

そう言って、おれはスーツの上着のポケットから、一枚のチケットを柿谷に差し出した。


「い、入江、これ・・・。神戸行きの新幹線の切符・・・おまえも神戸に行くんだろ?」

「おれのはあるんだ。それは余ったから、もう要らねーんだ」

「でも、代金・・・」

「要らねーよ」

「でも・・・」

「今日、おれは機嫌いいんだ。だからおまえらの話にも乗ってやったんだよ。とっとけよ!」

「あ、ありがとう・・・」

そうしておれは今度こそはと、会場出口に歩き出した。



「入江さん!」

また声をかけられ、うんざりする。
この声の主はだいたい見当がつく。
そう思いながらも振り返ったら、やはりあいつ・・・ひび割れためがねをかけた船津が紅潮した顔でおれを見ていた。


「さ、さっきの件ですけど、あれ、あの、ずっと考えていたんですけど、息ってずっと止めてるわけではないですよね?人間って、鼻でも呼吸できるわけで・・・・」

まだ続いてたのか、その話・・・・。

「おれ、急いでるから。もう帰るし」

「え?もう帰るんですか?も、もしかして・・・、早く琴子さんに会いたいとか!?」

「そうだ」

「うわっ!!そうですか!そうですよね!で・・・・か、帰ったらやっぱり・・・キ、キ、キ・・・///」

面倒臭いやつだな!!

「そうだ」

「やあああーーーっ!///そうですか!?やっぱりそうなんですか!?」

もうどうでもいいんだ。頼むから早く解放してくれ!

「というわけで、おれは帰るから」

「あ、あ、入江さん待って下さい~~、ぼくも真里奈さんに会いたくなったので、帰ります!!帰る途中にぜひキ、キ、キッスのノーハウを僕にご教授・・・・」

「悪いけどおれは、そんなレベルじゃねーんだ。それよりおまえ・・・・・めがね、完全に割れてるぞ」

「え、ええ!??」

船津はめがねのレンズが完全に割れていることも気づいていなかったみたいで、慌ててめがねを外してそれを確認しだす。
その隙におれは会場を後にしようとする。

「あ、ああーーー、入江さん、待って下さいーーーっ!まだお話がーーー」

「話なんてない!まずは実践してから、それから相談に来い!」

「じ、実践・・・・///」


何か妄想をしはじめて虚ろになった船津をやっと放置して、今度こそ本当におれは会場を出ることができた。

会場の外にでて、廊下を足早に歩きながら、おれは自然と笑みがこぼれるのがとまらない。



昨日までのいろんな感情の葛藤や、迷い。
それが琴子によって、全部払拭されたかと思うと、本当におれはいろんな意味で今、「卒業」したと実感している。


そして、今、もう一度、琴子の顔が早く見たい。

そんなはやる気持ちでタクシーに乗り込んだ。




**********


軽く見直しするつもりが、大幅に加筆してしまいました・・・(船津くんに思わず・・・)。

タイトルの「The Gift of the Magi 」はご存じの方がほとんどだと思いますが、オー・ヘンリー作の日本語題「賢者の贈り物」です。

簡単に要約すると「貧しい若い夫婦が、クリスマスプレゼントに、妻は夫に夫が大事にしている懐中時計の鎖を買おうと、自慢の髪を切って売り、そのお金を工面する。夫は妻のために、大事にしている懐中時計を売り、妻のきれいな髪に合う鼈甲の櫛を買う。一見愚かな行き違いだが、それは最も賢明な行為であったのではないか」という話です。

この相手を思い合う気持ちを、いつかイリコトで書きたいな~と思いつつ・・・難しくてできなかったのですが、今回ぴくもんさんにお話をいただいて、「『賢者の贈り物』をモチーフにしてみたい」と申し出たところ、ぴくもんさんもいつか「賢者の贈り物」で話を書きたいと思っていたとのことで!!

す、すごい!!それならば!と、話を進めてきましたが・・・。

相手のストーリーの展開を見ながら進めているので、まだこの先「下」がどんな展開になるのか、皆目見当もついていません(>_<)

なので、私も当然、次は「白紙」状態です(^^;)
今から、どんな展開になるか、本当にドキドキしています。
ぴくもんさん、よろしくお願いします。
そして、読んでいただいてる方々、本当にありがとうございますm(_ _)m


COMMENT

拍手コメントありがとうございます(*^_^*)
>藤夏さま

こちらにもありがとうございます♪船津くん!(笑)私も初めて書いたのですが、変に話が進んでしまいました。藤夏さんの言うとおり「純粋で真面目」って感じですよね。それにとても共感してしまい、ついつい加筆までしてしまいました(^_^;)とりあえず心が通じ合って、とても直樹が機嫌いいということで、直樹にわざといろいろ言わせてみたんですけど、喜んでいただけてよかったです~(^^)/タイトルのお話はとても深く、私には描ききれないとは思うのですが、直樹と琴子はこのお話のようにお互いのことを思いやる二人である、そうであってほしいとの希望も込めています。そこだけでも伝わっていただけたらうれしいです(^^)

>りきまるさま

こんばんは。原作での二人のキスシーンは、そのあとはどうなったのかと、本当に想像を膨らませてくれますよね(^^)ぴくもんさんが「謝恩会」というとってもぴったりの場所を提供してくださったので、なんとかそれを使ってみたいとこの話に繋げました。りきまるさんのコメント読んで、本当に渡辺くんが斗南大だったら・・・直樹の大学でも同級生だったら、もっといろいろ話広がっただろうな~と思わせてもらいました。なぜ渡辺くんは他の大学に(T_T)とりあえず、誰か直樹を対等(?)に話せる人はいないかとかなり考えて、船津くんにがんばってもらいました。あと一回私なりにがんばります。ありがとうございます♪

>繭さま

こんばんは。直樹のセリフ、ちょっとキザっぽかったですが、反応していただいてうれしかったです(^o^)直樹の謙遜のところは、私の書き方が悪くって、「もっと自分はレベルが上」って意味で書きました(^^;)なので、解釈は繭さんと私も同じですよ♪そして船津くんはそうです!私もちょっと琴子に似てるって書いてて初めて思いました。途中、それを直樹に呟かそうかと思ってたくらいなんですよ!真っ直ぐで、あることを考えたらそこに直進って感じですよね。そして真理奈に「キッスも2番ね」って!!それ、すごくうけました。言われそうです!(笑)その場面見てみたいくらいです(^^)私の方こそ、コメントでかなり興奮させてもらいました。ありがとうございます。
by chan-BB
2010/03/25(木) 19:26 [Edit

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こんにちは。
素敵なイタキスの二次創作をたくさん読ませていただき、ついつい自身も二次創作なるものを書いてしまいました。
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私の勝手な妄想話であるため、原作のイメージを大切にされる方、二次創作が苦手な方、二次創作が理解できない方は、ご遠慮ください。
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まだまだ拙い文章しか書けませんが、以上の注意をご理解いただき、読んでもいいかな~と思われた方のみ、ご閲覧下さい。
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