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2010.03.14 *Sun*

『春』  ~ある日曜日の風景~  1/2



一部、少し大人向け(かな?程度の)表現があります。
ご注意ください。

しかし、色気のある話ではないので・・・。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


日曜日。
晴れ。


昨日の天気予報の通り、今日はどうやら晴れているらしい。
まだカーテンを開けていない直樹と琴子の部屋。
だからしっかりと確認はできないが、カーテンから入る明るい光の様子から、春の陽気な天気であることが想像できる。



―――――午前9時。


「どうしちゃったの・・・?」

直樹と琴子は、珍しく今日はゆっくりとベッドでまだ寝ている。
日曜日に二人が朝、こうして寝坊できるのは一ヶ月ぶりくらいだろうか。
今日、直樹は一日休み。
琴子は夜勤があるものの、まだまだ時間がある。

「・・・昨日の夜もあんなに・・・」

琴子が呟く言葉に、直樹の返事はいっさいない。

直樹は、ただ顔を琴子の首筋から胸元に移動させ、昨日新しく着たばかりの琴子の春用のオレンジのチェックのパジャマのボタンを外しにかかっているだけ。
少し抵抗する琴子も、久しぶりのゆっくりできる特に予定のない日曜日に、そしてこのところずっと身体を合わせていなかったことに、なんとなく流れに任せてもいいかという気持ちになってしまっている。

「あまりゆっくりしてたら・・・、誰か起こしに来ちゃうかも・・・」

琴子の呟く言葉に、直樹の返事はいっさいない。

指を外したボタンの間に入れ、パジャマをはだけさせ、琴子の身体を横向きにする。
横を向いた琴子の胸元が、柔らかい小さなふたつの山になって現れる。
その山の間に直樹は、いつになくその柔らかさを味わうように顔を埋める。
こどものように、ただ温もりを求めるように。
そして何か安心を得るかのように、その膨らみに何度も顔を押しつける――――。



―――――午前11時半。



「もう、みんなどっかに行っちゃったみたいだね?」

やっと遅い、昼食兼朝食をダイニングで二人でとる。
義母の紀子が用意してくれていた、たくさんの種類の入った野菜のサラダに、紀子自家製のドレッシングをかけて、琴子が直樹の前に置く。
そして、琴子の淹れたコーヒーを渡す。


「ちょ、ちょっと・・・こんなのになっちゃったけど」

コーヒーを飲みながら、その声の方を一瞬見た直樹は、特に表情を変えず呟く。

「・・・学習しないんだな」
「ご、ごめん・・・。どうしても半熟にできなくって・・・」

お皿には、カチカチになった目玉焼きと、破裂したウィンナー。
それを申し訳なさそうに、琴子が直樹の前にゆっくりと置く。

それでも、直樹はフォークを伸ばして、ウィンナーを刺して口に入れ、ぱりっとたてて食べてくれる。
その様子に安心して、琴子もウィンナーに手を伸ばし、ぱりっと音をたててかじった。


「入江くん、今日一日何するの?」
「・・・琴子、おまえ、今日何時に家出る?」
「え?あたし?あたしは、3時くらいに家出ようかなって」
「じゃあ、それまでにちょっとつきあってくれるか」
「ええ!?ど、ど、どこへ!!??」

直樹が琴子を誘って、日曜日に、いや普段の日でも一緒に出かけようとすることは滅多とない。
デートらしきものをしたくてたまらない琴子にとって、この言葉は急激に琴子の胸を熱くした。

「ついてくれば、わかる」
「い、行くよ!どこでも行くから」

場所も知らされないのに、琴子は即答で返事をする。

「わ~~、何着て行こうかな~~!?」
「仕事に行くんだろ」
「で、でもその前に一緒に出かけるんだから、ちょっとおしゃれしたいじゃない!!?」
「すぐに終わる用だ」
「この前買ったワンピースと、春用のブーツ・・・、きっと合うよね!?」

直樹の声なんてもう琴子には、耳に入っていない。
天井を見上げる琴子の顔は、きらきらと輝いている。
目に映っているのは、天井ではなく琴子の頭の中のラブストーリーなんだろう。
直樹と出かける事実。
もうそれだけで琴子の気持ちははやるばかり。


「どんな感じか、着てみようっと!」

結局、ウィンナーをかじっただけで琴子は席を立ち、ダイニングから出て行ってしまい、直樹は小さくため息をついた。



―――――午後2時半。



「・・・ここに用があるの・・・?」

二人でバスに乗り、着いた場所は、郊外の大型スポーツショップだった。
なぜここに?
琴子が一瞬、テニス用品?と思いながら、店頭に貼ってあるチラシを見て、あることに気づく。
もしかしたら・・・。

「入江くん、野球用品見に来たの?」

琴子の質問に、珍しく一瞬動作を止めて目を見開く直樹。
いつになく勘のいい琴子に、驚きを隠せないといった感じか。


「よくわかったな」
「・・・何を?野球の何を買うつもりなの?」
「硬式ボール」
「・・・そっか・・・。浩平、4月から硬式ボール使えるって、楽しみにしてたもんね・・・」

そして二人でそのまま野球用品のコーナーに無言で向かう。



昨日、一人の患者が病院で亡くなった―――。
難しい手術でどうなるかわからない状態であったにもかかわらず、直樹の執刀した手術後はすこぶる状態がよかった。
術後の経過として、想定される状態を十分に家族にも伝えていたが、何か起きそうにないくらい順調な快復ぶりだった。
・・・が、昨日、順調な快復に反して、突然急変して亡くなってしまった・・・。
病気が治れば、また野球ができると楽しみにしていた、人懐っこい小学生の男の子。


野球用品のコーナーで、硬式のボールをひとつ取って、直樹が手でぎゅっと握る。

「今日、入江くん、一緒に病院行く?行って、そのボールご両親に渡す?まだ事務処理に家族の方いるかも」
「行かない。昨日ご両親とは十分話はした。休みの日までつぶして、一人の患者にずっとつきあっていたら、キリがないだろ。おまえが持って行ってくれ」
「そ、そうね・・・」

一見冷たい口調の直樹だが、こうして休みの日にここまで来ていることに、琴子は直樹の心中を察した。


「浩平、喜ぶね。ずっと硬式ボール使うのをずっと楽しみにしてたもんね」
「喜ぶもんか。結局使えないんだから」
「そ、そんなこと・・・。昨日、ご両親も入江くんに何度も『お世話になりました』『ありがとうございます』って頭下げてお礼言ってくれてたよね。ほんと、できる限りのことは・・・」
「・・・・ればいいんだ」
直樹が口元を動かさないくらいの表情で、小さく呟く。


「な、なに?」

「浩平も両親も、おれに向かってボール投げつければいいんだ!!」


小さい声だが、まさにボールを地面に叩きつけるような口調で直樹が言い放つ。
琴子は、その言葉のボールが、思い切り自分の心にぶつけられたような気がした。


「そ、そんなこと言わないで!!」


琴子は直立不動の直樹のお腹あたりに手を回して、ぎゅっと直樹を抱きしめた。
直樹の表情はあまりないが、お腹のあたりに顔を押しつけると、呼吸でひどくお腹のあたりが波打っているのがわかる。
精神的にかなり高揚していることが、それから感じ取れる。


「離れろよ、人が来るだろ」
冷静な声で直樹は、琴子の頭を手で持ち上げようとする。
それでも琴子はぎゅっと手を直樹のお腹に巻き付けて、離れようとしない。



―もっと早くに気づけばよかった。
まだ経験の浅い直樹にとって、担当した患者が急変して亡くなったのが、初めてだったということを。

―もっと早くに気づいてあげればよかった。
昨夜からのあの一連の、琴子を執拗に求めてきた行為の意味を。



琴子は今は絶対離れないというように、全身を震わせながら必死に直樹にしがみついている形になっている。

「・・・・なんで、おまえが泣いてるんだよ」
ちょっと息を吐き出し、天を仰いで直樹が呟く。

「泣いてない」
「泣いてるだろ!身体が震えてる」
「泣いてない!」

そう言って、直樹を見上げた琴子の顔は、涙を目にいっぱいためて赤くなっている。
しかし、その涙は湖のようにおだやかにそこにあるだけで、決して流れ出してはいなかった。


しばらくその琴子の大きな目の中の湖を直樹は見つめていた。
やがて、そっと指を琴子の目の下に置く。

その指で、ぎゅっと琴子の目の下を押さえてみると、ザーッとダムから放流された水のように、琴子の目から涙が溢れ出した・・・。


「やっぱり泣いた」


直樹は今日初めて口元を緩めた。
そして、琴子の頭をポンと叩く。


「行くぞ」




**********

ちょっと長くなるので、ここで一旦切ります。

この話はちょうど休止をする日に思いつきました。
その後は、忙しかったこともあり、ブログを再開するかもはっきり決めてなかったので、時間のある時にだらだらだらだらと、1、2週間くらいかけてこの話を書いてました。
だからだらだらした話なのか!?って感じですが、後半はなんとか希望を持てるように書いたつもりです(^^;)







COMMENT

拍手コメントありがとうございます(*^_^*)
繭さん

こんにちは。この1/2はちょっと重い話でしたよね。自分でもこんな重いこと、さらっと書いちゃっていいのだろうかと思いつつ・・・。あと、初めの描写もなくてのいいのか、いや、でもやっぱり必要なのかもしれないと、いろいろ思い巡らせながら書きました。患者、直樹、琴子、いろんな立場からの感想、本当に心に沁みました。寄り添ってもらったみたいで、うれしいです。ありがとうございます。
by chan-BB
2010/03/16(火) 17:46 [Edit
病院の、医者、看護師て、職業は、元気で,退院できる人ばかりじゃないんだよね、治療の甲斐なく?亡くなる方も言って、子供から、お年寄り、歯がゆい、重いすること、あるだろうね。
by なおちゃん
2015/03/18(水) 19:28 [Edit
コメントありがとうございます

なおちゃんさま

こんにちは。イタキスはラブコメですが、病院が舞台でもあるので、きっとイリコトにもいろいろな出会いや別れがあったと想います。天才の入江くんでも、どうすることもできないことも多かったでしょうね。
by 千夜夢
2015/03/23(月) 13:11 [Edit

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こんにちは。
素敵なイタキスの二次創作をたくさん読ませていただき、ついつい自身も二次創作なるものを書いてしまいました。
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