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2016.06.30 *Thu*

露草にバッタが飛ぶ



鬱陶しい天気が続きますが、そろそろ晴れの日も多くなるような予感・・・?
ということで、季節ものの話を一つ書きました。

非常に日常的で、何の事件もおきないとりとめのない話です。
「だからどうした?」な話です。
そう思って読んでいただきたいです(^^;)
・・・・・・・・・・



「雨の日は嫌いだけど、でも嫌いじゃないかも」

また意味のわからないことを呟くものだと直樹は思う。
雨が続く梅雨の毎日。
琴子は、部屋の窓から外を眺めながらそう言った。


「ねえ、入江くん、入江くんは、雨は嫌い?」

ほらまた、こっちにも無理矢理話題を振ってきた、と直樹は少し怪訝になる。
どうでもいい話は、あまりしたくないものだと毎回直樹は思う。

「どっちでも」

適当な返事をする。
返事をしないとしつこくまた聞いてくるからだ。

「どっちでもって、どっちかにしてよ」

そういう琴子こそ“嫌いだけど、嫌いじゃないかも”と言ったくせにと直樹は思う。
あまり頭の中で深く考えずに、また直樹は適当に返事をする。

「別に嫌いでもないけど」

「なんで?」

「雨が降るのも、必要なことだしな」

「・・・ふ~ん・・・」


適当に答えただけだったが、琴子は意外とすんなり納得して受け入れたようだ。
それから窓の外の雨を眺めながら、特に直樹に話しかけてくることはなかった。
そんな琴子を見ていると、さっき琴子はなぜ「雨の日は嫌いだけど、でも嫌いじゃないかも」と言ったのかが気になってきた。
琴子に聞いてみたい気もしたが、的外れな返事をされそうな予感もある。
雨続きで鬱陶しい空気のせいか、なんとなく問答する気力もあまりない。
直樹は敢えて問わずそのまま時を過ごした。






「入江くん、入江くん、早く大学行こうよ!」

久々に晴れた次の日の朝。
琴子は珍しく早起きをして、まだ朝食を食べている直樹を急かした。

「琴子ちゃん、今日はいつになく元気ね」

紀子が微笑ましい表情を浮かべながら言う。

「やっぱ晴れの日はいいですね!やる気に満ちあふれます」

「まあまあ、ふふふふ。夜までやる気に満ちあふれていて欲しいわ。お兄ちゃんも、鬱陶しい天気が続いてパワーダウンしていたかもしれないけれど、そろそろやる気に満ちあふれて欲しいし」

紀子は意味深に目を細めながら、直樹の方を見た。
なんのことを言っているのか、直樹は察しがついた。
紀子は適当に言っているだけかもしれないが、最近夜がご無沙汰なことをまるで紀子は知っているかのようだ。
直樹はいつものように、無表情で反応を見せなかった。

「あたしは、今日は夜までやる気に満ちあふれてそうですよ、お義母さん~!」

空気を読めない琴子が、直樹の代わりとばかりに高らかに返事をする。
琴子に他意はない。
ただ元気なだけなのだ。

「まあ、琴子ちゃん、すばらしいわ!きっとそのパワー、お兄ちゃんにも伝わると思うわ」

「はい。伝わらせてみせます。最近、入江くんったら、入江くん自体が梅雨のように暗かったですから」

「琴子ちゃん、お兄ちゃんに梅雨明けしてあげてね」

直樹は、ぴくりとする。
“梅雨明けしてあげて”ってどういう意味なのだと・・・。

「はい。入江くんは、今日を境に梅雨明けします!あたしがさせてみせます!」

「宣言が出たわ!すばらしい!ああ~~、もう梅雨明け宣言と共に、赤ちゃん宣言が聞けるなんてサイコー!」

「へ?赤ちゃん宣言・・・???」

パチパチと高らかに拍手をする紀子の横で、琴子はよく意味がわからず目をぱちくりさせていた。
重雄や裕樹は、なんとなくバツが悪く、もくもくとパンを口に運んでいた。
直樹は相変わらず無表情。何事もなかったかのように、コーヒーを静かに飲んでいた。
しかし頭の中では、琴子の「あたしがさせてみせます!」宣言がこだましていた。
いったいどんなことをしてくれるのやら・・・。
緩みそうになる口元をごまかすために、直樹はまたコーヒーをすすった。






琴子の思い通り、今日はいつもより早く家を出て、直樹と琴子は一緒に大学に行くことになった。
今朝は本当に、昨日までの雨とはうって変わっての快晴だった。
太陽がこんなに眩しいものだったのかと改めて感じるくらい、外はきらきらと輝いていた。


「あ、入江くん、梅雨草だよ!」

道路の脇に咲く、青い花を指さし琴子が言う。
まだ雨のしずくを葉にいっぱい滴らせ、その花は光っていた。

「ああ、露草だな」

「梅雨に咲くから、梅雨草なんでしょう?わ~、今の時期にぴったり」

「いや、別に梅雨に咲くから梅雨草じゃないだろ。『露』って言うのは、『雨』に道路の『路』って書く方の『露』」

「雨に、道路の路・・・?」

ああ、また琴子にはわからないだろうなと直樹は思った。

「あ、わかった!露口茂の『露』だね!山さ~ん!」

「・・・・・・・」

予想外にすぐにわかったので、直樹は少し驚いた。
しかもなぜ、そんな古風な名前を・・・。

「でも、露草ってきれいな字だし、名前だね」

「そうだな」

「あ、バッタ!」

琴子が一際大きな声をあげて、直樹の腕を掴んだ。
露草の横に、小さなバッタがいたのだ。
とてもきれいな黄緑色をしている。

「早いな。もうこんな時期にバッタがいるんだ」

直樹は感心しながら、そのバッタを見た。

「きゃあ、跳ねた!きゃあ、また跳ねた!」

琴子はそう言いながら、直樹の腕をぎゅうぎゅうと掴む。

「なんでそんな興奮するんだ。痛いだろ腕が」

「きゃあ、露草の葉っぱに乗ったよ」

「だから痛いって、腕を掴むな」

「わ~、何かお似合い、色がステキ」

ふいに琴子の手が離れ、琴子はその手を自分の頬にあててうっとりとした表情で露草とバッタを眺めた。
直樹はきつく掴まれた腕をさすりながらも、その様子を見た。
確かにとても絵になっていた。
鮮やかな青い花、濃い緑の葉、そこに黄緑色のバッタ。
琴子の言うように「お似合い」といった様子だった。
よく見かける露草が、バッタのせいでとても新鮮に見えるのも不思議だった。

そのとき―。


「きゃああ!」

近くを走った車が、昨夜のたまった雨水を踏み散らしていったのだ。
じゃばんという水音が、直樹と琴子の方に大きく飛び散った。
琴子は驚いて、思わず直樹に飛びついた。

「おまえ・・・」

飛びついたのはいいが、思い切り足を地面から離して飛び跳ねて、直樹の身体に飛び乗った姿になっている。

「こんなマンガみたいな姿・・・。早く下りろよ」

「あ、ご、ごめん。あーーーっ!」

「今度は何だ」

「バッタがいなくなっている」

「そりゃおまえが、それだけでかい声とジェスチャーすればいなくなるだろ」

「もっと見ていたかったのに・・・」

「もういいだろ。遅刻するぞ」

「うん」

「つーか、早く下りろ!」

「あ、ごめん。ついつい乗り心地が良くって」

「おまえも、バッタか!?」

直樹の怒声と共に、琴子はやわやわと地面に足を着いた。




再び大学に向けて歩き出すと、直樹の方からなぜか自然に言葉が出てきた。

「昨日おまえ、なんで雨の日は嫌いだけど、嫌いじゃないって言ったんだ?」

「へ?あたし、そんなこと言ったっけ?」

「・・・・・・・」

昨日の他愛のない会話を覚えていた自分が恥ずかしいとさえ直樹は思った。

「あ、うそうそ。言ったね。思い出した」

「もうどうでもいいけど」

「雨はじめじめしてるからやっぱり好きじゃないけど、でも、雨が降ったあとは必ずいつか雨は止んで晴れるでしょう。それを考えると楽しみになるから、雨も嫌いじゃないな~って思ったから」

「雨のあとの晴れを楽しみに?」

「そう!ずっと晴れだと晴れの良さもわからなくなるけど、雨があるから晴れが楽しみだし、雨のあとの晴れがすっごくすばらしいものに思えてくるから」

「ぷっ」

「何かおかしい?」

「いや、至って普通の答えだな」

「そう?」

「でも、おまえらしい」


そう言いながら、直樹は快晴の空を見上げた。
青い空に淀んだ空気は存在しない。
眩しくて眩しくて。
とても新鮮だった。

琴子と居ると、思いがけないことに多々出遭う。
あたりまえのことに改めて気づくことも多い。
琴子もまた、自分と居て気づかないことに気づくことが多いのだろうかと直樹は思う。

そう思った時、ふとさっきの露草とバッタの光景が目に浮かんだ。
悪くない光景だと、なぜか思わず直樹は頬が緩む。



「ねえ、入江くん、露草の花言葉って知ってる?」

「いや、知らない」


本当は知っている。
でも直樹は言わなかった。
そんなロマンチストではないと思いたかったからだ。



――露草  花言葉「変わらぬ思い」



頬がまた緩むのは、琴子の言うように雨のあとに晴れたせいだと直樹は思った。




**********

で、夜はどうなったんだ――!?とツッコミ。

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2016/06/30(木) 17:12 [Edit
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2016/07/11(月) 13:40 [Edit
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2016/07/26(火) 22:07 [Edit
コメント&拍手コメントありがとうございます

たまちさま

こちらもまたまた遅い返事でごめんなさい。いつもありがとうございます。
特に変哲もない話ですが、時期的にふと書いてみたくなりました。
そうですよね。今のイリコトが平和だから、こういう日常も幸せな感じになるんだと思います。まさにそんな一コマを妄想してみました。小さなことでも琴子ちゃんに振り回されている感の入江くんは大好きです♪そして振り回されながらさらに琴子ちゃんを好きになっていく入江くんも(*^_^*)
さあ入江くんは、琴子ちゃんの発言を夜にうま~く活かしたでしょうかね?( ̄m ̄*)


Yunさま

またまた遅いお返事で申し訳ありません。本当に思いつき更新ですが、いつも読んで下さってありがとうございます。
ちょうど梅雨ネタをYunさんも考えておられたのですね(*^_^*)梅雨ってどうしても鬱陶しく暗くなりがちですが、初夏を期待して明るめにこちらはまとめました。そして今は、秋を感じながらお返事を・・・。
原作のイメージを感じてもらえてうれしいです♪
入江夫婦の梅雨明けは、紀子ママに気象解説してほしいですね!そこまで描けたらよかったとコメントから感じてしまいましたw


マロンさま

またまたこちらも遅いお返事ですみません。いつもコメントありがとうございます。
「雨」はイリコトにとって重要なワードですよね。あの時期を乗り越えて、すでに夫婦になった二人には「梅雨」もなんのそのですが、でも明けてくれた方がさっぱりでしょうね。
露草とバッタののコントラストはイリコトの二人のようだと思っていただき、すごく感激です!「露草」だけだとなんとなくじめじめした時期を思い出しますが、バッタがいることでぱあっと明るくなるのは、まさに二人そのものかも(*^_^*)


ねーさんさま

またまた遅いお返事ですみません。更新気付いて下さりありがとうございます。
そっか、ねーさんさんの地域は梅雨がないんですね!でも今年は珍しく台風通過がありましたよね。お変わりありませんでしたか?
露草とバッタの色彩も目に浮かべて下さってうれしいです。じめっとした露草が、バッタのおかげで輝いている姿を二人に反映して感じてもらえれば嬉しいです♪
夜の二人は、また野獣に使えるかな~と思いつつ、すっかり秋へと向かっております・・・。


吉キチさま

お久しぶりです。すっごいコメントいただいたのに遅いお返事ですみません。
ずっと読んで下さっていてありがとうございます。
そして今回も・・・、そこまでいきましたか!?(爆!)
キーワードは「てぶくろ」ですね。ええ、さすがです。誰がこの話から「てぶくろ」を思いつきましょうか?でも妙にしっくりしているし、3番まで歌い手代わりながら展開していて・・・もう、もう、途中から目が霞んで読めなくなってきてしまいました(>_<)
これも誤って「公開コメント」されればよかったのにと悪魔な妄想をしてしまいました。公開できないのが残念です。
どれも秀逸な作品ですが、やはり私はひいきもあって1番が好きですね( ̄m ̄*)


りょうママさま

今回も遅いお返事ですみません。すっかり梅雨はおろか夏も過ぎた季節になってしまいました・・・。
梅雨は鬱陶しいというのが定番のようになっていますが、イリコトにはそれほどの影響は与えませんね。
入江くんの梅雨明けは、例年より早かったでしょうかね?w


紀子ママさま

こちらこそご無沙汰しています。今回も遅いお返事になってしまってすみません。
紀子ママさんの露草の鬱陶しいところが、なんだか全部入江くんに当てはまっている気がして!読みながら爆笑してしまいました。
一見雑草の如くしぶといのは琴子ちゃんにも当てはまりますが、なんだろう?私は入江くんを想像してしまいました。元気回復が早いってところでしょうか?(爆)
家族での会話のあたりとか、楽しんで読んで下さったようでうれしいです。
夜はファイヤーって!?爆!なぜかキャンプファイヤーのような絵が浮かんでしまいまたまた爆笑です。


heorakimさま

せっかく更新気付いてくださりコメントも下さったのに、遅いお返事ですみません。はい、私はだいたい元気にしておりました。お気遣いありがとうございます。
琴子ちゃんの様子が自然体に感じてもらえて嬉しいです♪入江くんは天の邪鬼ですから、花言葉などは言ってあげたいタイプですね。でも花言葉は知っているし、自分でしみじみ感じている・・・(笑)。


kaotokuchanさま

お久しぶりです!100拍手目をありがとうございます。そして遅いお返事、ごめんなさい・・・。
いろいろと変化がお有りだったのですね。私もびっくりするくらい同じです。環境も同じようだし、体調も同じようであります。そういう時期なのかもしれませんね。変化になじまないとなあと常々思っています。
私も琴子ちゃんの明るい未来を感じるようなセリフでトンネルを抜けて・・・、私もそう思っています!こんなところまで同じように感じられていて本当に嬉しいです!そしてつくづく、琴子ちゃんって看護師の仕事がぴったりだと思います(*^_^*)
あまり更新はないですが、またぜひ覗いて下されば嬉しいです。ありがとうございます。


ちびぞうさま

またまた遅いお返事ですみません。
裏の方も読み返して下さっていてありがとうございます。コメントもしっかり読ませていただきました。嬉しいです♪
確かに「雨音」を読んだあとにこちらを読んだら、雨繋がりでなんとも複雑な感じがするかもしれませんね(^_^;)一旦リセットして下さいな(笑)。
夜の話は、また野獣シリーズに使えるかな~なんて思いながら、もはや秋の気配が・・・。
by 千夜夢
2016/09/14(水) 14:56 [Edit
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このコメントは管理人のみ閲覧できます
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2016/09/27(火) 15:14 [Edit

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Author:千夜夢

こんにちは。
素敵なイタキスの二次創作をたくさん読ませていただき、ついつい自身も二次創作なるものを書いてしまいました。
ここは、私の超個人的な妄想話置き場です。

原作者様、出版社様等とは一切関係ございません。
私の勝手な妄想話であるため、原作のイメージを大切にされる方、二次創作が苦手な方、二次創作が理解できない方は、ご遠慮ください。
また、ブログ内の全ての文章・いただきものを含む画像等の無断転載・転用を固くお断りします。

まだまだ拙い文章しか書けませんが、以上の注意をご理解いただき、読んでもいいかな~と思われた方のみ、ご閲覧下さい。
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