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2010.01.15 *Fri*

ドロップ


「わあ。琴子ちゃんのお弁当すごーいっ!」

あたしは今、小学校の運動会でお父さんとお弁当を食べている。

お父さんの作ったお弁当は三段の重箱になっていて、あたしたち二人で食べるにはとても食べきれないくらいの量だ。
色とりどりで、とてもきれい。
もちろん、味もお父さんが作ったものだから、すごくおいしい。
お友達がたくさん寄ってきて、あたしのお弁当を覗き込む。

「ほらほら、みなさんも食べてってくださいよ」

お父さんがお友達にどうぞどうぞと重箱のお弁当を勧める。

おいしい おいしい
みんなが口々に言ってくれて、あたしの顔も自然と綻ぶ。


「琴子ちゃんこれ」

友達の夢子ちゃんが、アルミホイルに包まれた丸いものをくれる。

「たくさん食べちゃったから、あたしのおにぎりあげるね。琴子ちゃんのお弁当と比べたら、おいしくないと思うけど」

丸とも三角とも言えない形のそのものの、アルミをパリパリとはがしていくと、中からお米が見えてきた。
本当におにぎりだったんだ。
こんな形のおにぎりも、アルミに包まれたおにぎりもあたしは初めて見た。

ぐしゃっとかぶりついて食べてみる。
水っぽい味がする。

あまりおいしくないけれど、なんだか貪りついて食べてしまう。

ぽろぽろお米が口元からこぼれてしまって。
なぜか涙もぽろぽろ流れる。


ぽろぽろぽろぽろ―――――――


―琴子、泣かないで

あたしの頬を優しく誰かが撫でてくれる。

優しいその手をぎゅっと握って、あたしはひっくひっくと涙をぽろぽろ落としながら眠る。
流したあたしの涙は、ドロップになって布団いっぱいにあふれる。
だけど、誰もそのドロップを掬ってはくれない ――。





「琴子ちゃん、みつあみ上手~!!」

あたしは今、小学校の教室にいる。

今朝の髪型は、あたしも本当にうまくできたと思う。
真ん中で髪の毛を大きく二つに分けて、それを左右でみつあみにする。
そしてそのみつあみを輪にしてとめる。
右も左もとってもうまくできた。

「あたしなんて、お母さん下手だから、高さが違うんだよ」

お友達の亜由美ちゃんが、自分の髪を触りながら不満そうに言う。
亜由美ちゃんは頭の上の方で二つに分けた髪を、ちょっと後ろの方で二つにくくってもらっている。
その左右に分けた髪は、確かに右の方が高くて、左がさがっている。

でも、あたしはそんな高い位置で髪の毛をくくることができない。
後ろの方でくくることもまだできない。
だって、見えないから。

もっとがんばらなくっちゃ。

ドジで不器用なあたしだけど、みつあみも上手になったから、きっと練習したら絶対できるはず。
ガッツポーズを力強くしたら、なんだかまた涙がでてきた。


ぽろぽろぽろぽろ―――――――


―琴子、がんばったね

あたしの髪の毛を優しく誰かが梳いてくれる。

優しいその手をぎゅっと握って、あたしはひっくひっくと涙をぽろぽろ落としながら眠る。
流したあたしの涙は、ドロップになって布団いっぱいにあふれる。
だけど、誰もそのドロップを掬ってはくれない ――。



―いつもがんばってる琴子にご褒美をあげようか。
―琴子は何がほしいの?

お空の上から、優しい声が聞こえてくる。



「王子様がほしい!」

白馬に乗って、背が高くて、ハンサムで、頭がよくって、スポーツも万能で、そしてそして------

あたしだけを好きでいてくれる王子様


―それにはいっぱい努力しなくちゃダメかもね

うんうんうん

あたしは何度も首をぶんぶん振って、ぶんぶんぶんぶん振り続けて・・・・・


痛いっ

首の痛さで目が覚めた。




夢から覚めて、目の前を見たら、本当に王子様がいた。
入江くん。

「うっ」

く、臭い・・・・珍しく、入江くんがお酒臭い。

この臭いで急に現実に戻った。
そうだ、ここは秋田の実家。
昨日、あたしの親戚にいっぱい会って、入江くんは夜遅くまでお父さんとお酒を飲んで話していた。
ここに来て知ったお母さんの過去。
ドジでおてんばで、あたしにそっくり。
入江くんは、そんなあたしのお母さんのことどう思ったんだろう。

入江くんの右腕があたしの首の下にあって、ちょっと腕を折り曲げてあたしの頭に掌を置いている。
入江くんの左腕はあたしの胸の上にあって、ちょっと腕を折り曲げてあたしの頬に掌を置いている。

さっきの夢で、あたしの頬を優しく撫でてくれたのは、入江くん?
さっきの夢で、あたしの髪を優しく梳いてくれたのは、お母さん?


入江くんが、こんな秋田までお母さんに会いに来てくれたから、お母さんが天国から入江くんを見に来てくれたのかもしれない。
もしかして、入江くんを通してお母さんがあたしの頬を撫でてくれたの?髪を梳いてくれたの?


入江くんの長いまつげにそっと指で触れて見る。

お母さん、本当に入江くんって、王子様みたいでしょ。

あたし、がんばったから、お母さんが天国から神様に頼んで、本当に王子様をご褒美にくれたのかな。


・・・ううん!

ううん!ううん!
まだまだ、がんばり足りないよね。
あたしはお医者さまになる入江くんを支えるために、立派な看護師にならなくちゃいけない。

入江くんに少しでも協力したい。
入江くんを全力で助けたい。
そして、どんな時も、傍で入江くんを見守っていたい・・・・。

まだまだまだまだ、がんばらないといけないね。


ずっと頑張り続けていたら、入江くんはお母さんみたいに、急にいなくなったりしないよね・・・・。



ぽろぽろぽろぽろ―――――――



「どうした?」

ちょっとお酒臭い入江くんが、長いまつげを少し上げて、寝起きの潤んだ目であたしを見る。

「お母さん、思い出したか?」

低く静かなその声は、あたしをいつも安心へと導いてくれる。


「ねえ、どうしてあたしの布団で寝てるの?入江くんの布団、隣にあるじゃない」

「寒かったから」

この間髪入れさせないそっけない返事。
そして冷たい眼。

それでもあたしと一緒にいてくれる入江くん。
あたしのお母さんのお墓参りまで来てくれた入江くんがあたしには愛しい。


「入江くん・・・息が臭いよ。すっごくお酒くさい」

あたしはしらじらしく鼻をつまんで、困った顔をしてみせる。


はーっ
はーっ
はーっ!!

入江くんが、わざと何度も息をあたしに吹きかけてくる。

「きゃあ、やだよ~・・・、酒臭い王子様なんていやっ!・・・」

あたしが顔をしかめてもっと嫌そうにすると、うれしそうに入江くんが笑う。
入江くんは、あたしが困った顔をするといつもとても活き活きとする。


「入江くんって」

「ん?」

「・・・・お母さんみたいだね」

「あのおまえに見た目も中身もそっくりな、ミスとんぶりのお母さんに??」

「そう」


ぷっ!
入江くんは、呆れた顔で吹き出して、そしてぎゅっとあたしを抱きしめてくれた。


だって。
入江くんもお母さんも、あたしが胸の中で思い描いたら、いつも二人とも甘酸っぱくて。
そして安心するから。



入江くんが優しいキスで、あたしの涙を掬い取ってくれる。
すると、涙がドロップみたいになって、ポロッと布団に落ちて、弾けて消えた――。




―琴子、よかったね

そんな声が聞こえた気がして、あたしは今入江くんの腕の中で、お母さんのお腹の中にいるような温かい気持ちになる。



(この話は「イタKiss何でも書いてみよう!」に投稿させていただきました。)
 
**********

お正月に、イタキス文庫本を読み直して、「琴子のお母さんお墓参り」のところでぼろぼろ泣いちゃって、その思いをなんとかできないかと書いたのが、この「ドロップ」です。




COMMENT

拍手コメントありがとうございます

くーこさま

こちらも再読していただき、ありがとうございます~(*^_^*)
ちょっと琴子ちゃんの子供のころの描写が切なかったかもしれませんね。でも琴子は本当に頑張り屋さんですから♪本当は寂しくて、切ない日もあったでしょうが、あまりそれを表に出さないですよね。
そしてなんといってもその頑張りのご褒美が入江くんだと思います(*^_^*)
でも入江くんにとっても、琴子はご褒美だと思うのですがね。
素敵なコメントにうるっとしながら読ませていただき・・・そして最後で笑わせてもらいました!
くーこさん、思いっきりリアルイリコト夫婦ですやん!!?(笑)幸せ万歳ですよね~~♪
by chan-BB
2011/04/20(水) 15:02 [Edit
拍手コメントありがとうございます

無記名さま(6/1 17:58)

ドロップは、私にとってもかなり思い入れのある話です。原作に沿っているような、だけどかなり妄想しすぎたような・・・(^^;)
切なくて、だけど優しさに幸せになるって言っていただけて、本当にうれしいです。ありがとうございました。
またこんなお話も、書いてみたいな~と思っています(*^_^*)
by chan-BB
2011/06/01(水) 20:39 [Edit
拍手コメントありがとうございます

無記名さま(8/15 22:24)

いろいろと過去作を読み返していただきありがとうございます。読み返ししていただくことって、とっても嬉しいんですよ。
「ドロップ」はかなり初期の作品ですが、原作の琴子ちゃんのお母さんの墓参りのシーンとある曲を聴きながらすらすらと筆が進んだことを思い出します。
琴子ちゃんはとても純粋で天真爛漫というイメージですよね。その陰にある部分が、この「ドロップ」にはあるかもしれません。
勉強は苦手な琴子ちゃんのイメージですが、その反面、とても一生懸命で強い気持ちが心の奥底にあると思っています。
「ドロップ」でそんな深い琴子ちゃんの心の部分まで覗いてくださり、本当に感激です。
何気なく書いた自分の話ですが、こうしてとても深く読み取って下さる読者の方がいることを忘れないようにしたいと思いました。
ありがとうございます。
by 千夜夢
2013/08/21(水) 12:36 [Edit

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Author:千夜夢

こんにちは。
素敵なイタキスの二次創作をたくさん読ませていただき、ついつい自身も二次創作なるものを書いてしまいました。
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私の勝手な妄想話であるため、原作のイメージを大切にされる方、二次創作が苦手な方、二次創作が理解できない方は、ご遠慮ください。
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まだまだ拙い文章しか書けませんが、以上の注意をご理解いただき、読んでもいいかな~と思われた方のみ、ご閲覧下さい。
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