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2015.03.26 *Thu*

春の産声 3



珍しく連日更新です。
・・・・・・・・・・・・・・


「琴子さんと入江先生って、本当に仲良しだよね」

そのまま弥生ちゃんに付き添って病室まで行った。
弥生ちゃんは、ひょいと松葉杖を置き、一人でベッドに移動する。
事故に遭った日はそう遠くない。
それなのに、まるで今までもそうだったかのように、軽く振る舞う仕草がとても自然だ。
すでにこの生活に弥生ちゃんの身体が順応していることが、すごいと思った。
すごいを通り越して、すばらしいとさえあたしは思っている。

「弥生ちゃんくらいだよ。あたしと入江くんが仲良しだなんて言ってくれるの」

「え?そうなの?なんで?」

「たいていはみんな、未だにあたしの片思いとか言うんだもん」

「ははは」

口を尖らせて言うあたしに、弥生ちゃんは軽やかに笑った。

「あたしのね、お母さんもどうやらお父さんに片思いだったらしいよ」

「え?」

ふいに話し出した弥生ちゃんの話に、思わずあたしは身を乗り出す。
話にも興味があったけれど、何より弥生ちゃんからお母さんの話題が出たことに興味を抱いた。

「言ったっけ?あたしのお母さんとお父さんも、斗南高校だったって」

「知らない!そうだったの?お母さん達も斗南高校だったの?」

「うん。どうやらお母さん、お父さんに入学式から一目惚れだったみたい」

「ええ~っ!あたしと一緒!」

「でしょう?前に琴子さんにそれ聞いて、あたしもビックリしてたんだ」

「で、どうなったの?お母さんから告白したのかな?」

「それはよくわからないの。だってお母さん、それを聞いてもあまり答えてくれないし」

「なんで?」

「恥ずかしいのかな?それとも、あまり・・・、お父さんのこと思い出したくないのかも・・・」

そう言った弥生ちゃんの表情がいつになく寂しそうで、あたしは胸がきゅっと痛んだ。

「だからおばあちゃんにね、いろいろ聞いてみたの。そしてお母さんが片思いだったことだけは判明したんだけど、そのあとはどうやって二人が付き合ったのかは不明。いつから付き合っていたのかもよくわかんない」

「そうなんだ」

「でね、大学も二人とも斗南大学に進んだみたいで」

「わあ!それもあたしたちと一緒!弥生ちゃんのお母さんとお父さんって、あたしと入江くんと似ているところがいっぱいあるね」

「ふふふ」

また弥生ちゃんは、頬をピンクにして、嬉しそうに笑う。
よかった。
思い出話は、決して寂しいことばかりではないよね。

「でもね、大学出て就職して社会人一年目で、お母さんあたしを妊娠しちゃったみたいなの」

「わあ、そうだったの」

だったら23歳くらいで妊娠ってことか。
あたしはその年ではもう結婚していたけど、まだ大学生だったな。

「できちゃった婚ってやつよね。社会人一年目なのに大変~って、あたしでも思っちゃうよ。でもそれで、すぐに結婚したみたいなんだけど」

「もうその頃は、二人は長く付き合っていたんだよね。結婚も迷いがなかったと思うよ」

「でもそのあと、お父さんはすぐに死んじゃったけど」

「あ・・・」

そうだった。
弥生ちゃんのお父さんは、お母さんが妊娠中に亡くなったって。
弥生ちゃんのお母さんは、23歳で未亡人になったんだ。
社会人一年生でいろいろと大変なときに、妊娠、結婚、死別・・・、なんて、なんて壮絶な・・・。


「琴子さん?大丈夫?」

「へ?あ、ああ」

あたしったら、思わずその頃の弥生ちゃんのお母さんの心境を想像して・・・、というか想像もできなくて、思わず呆然と立ち尽くしていたみたい。
弥生ちゃんに顔をのぞかれて、ふと我に返ってしまった。

「びっくりした?」

「え、ああ、うん。お母さん、大変だったね」

あたしったら、そう言うのがやっと。

「そうだね。あたしもそう思うよ」

その点、弥生ちゃんは、とても冷静に応える。
そしてまた、あたしの顔を伺いこう聞く。

「ねえ?琴子さんだったらどうした?」

「何が?」

「うちのお母さんと同じ境遇になったら、そのまま赤ちゃん産んだ?」

「え?」

「だって、まだ社会人一年生で、さらに夫を亡くしたんだよ。将来のことや仕事のこと考えて、琴子さんなら一人でも赤ちゃん産む?」

なんで?と思った。
なんで弥生ちゃんは、こんなことを・・・。
でも、あたしの答えなんて当然決まってるじゃない。

「もちろん、絶対産むよ!!産まない選択だなんて、絶対ないよ!!」

「そ、そうなの?」

「あたりまえ!」

弥生ちゃんは、珍しく呆けた顔で口をぽかんと開けている。
なんで?なんで、そんなに驚いているの?
当たり前のことだと思うけど。

しかしそれより・・・、考えてみると、夫を亡くすなんてこと・・・、あたしにとっては入江くんがいなくなるってことだよね。
そんなこと、考えてもみなかった。
そんなこと、そんなこと考えたら、あたし・・・。

「あ、こ、琴子さん」

「あ、ごめん。つい、入江くんがいなくなったらとか思って」

あたしは、ぽろぽろと涙をこぼしていた。
入江くんがいなくなるなんて想像しただけで辛い。
そして、そんな辛いことを、弥生ちゃんのお母さんが体験していたなんて考えると、なんてなんて・・・。

「ごめん、琴子さん、ごめん」

「いいよ。なんで弥生ちゃんが」

あたしの手を握り、なぜか必死に謝ってくる弥生ちゃん。
あたしは、涙を拭き取りながら、弥生ちゃんの手をぎゅっと握り返した。

「ごめんね、琴子さん。入江先生がそんなことなるなんて、絶対ないから。変な質問してごめんね」

「大丈夫だよ。気にしないで」

弥生ちゃんの方が、泣きそうな顔になっている。
でも、弥生ちゃんは、何も悪くないよ。
あたしがちょっといろいろ考えて、感傷的になっているだけ。

「それにね。あたし、なんだかさらに確信できてきた」

「へ?」

「え、いや、考えたくはないけど、もし入江くんに何かあったりしても、あたしは絶対子どもを産むって!いや、産みたい!って」

あたしは、腕をもちあげガッツポーズをしてみせた。
弥生ちゃんは、ぽかんとした顔で見ている。

「だって、愛する人の子どもだよ!希望だよ!」

「希望?・・・先のことなんて考えないの?」

「先のこと考えるのって、あたし一番苦手だもん。あたしが考える先のことって、いつもだいたい幸せな妄想ばかりだし」

舌を出してそう応えるあたし。
自分で言いながら、本当にあたしってそうだなと思う。
だから、入江くんがどうなるとかも、今は全然考えたくもない。


「ありがとう。琴子さん」

ぎゅっとあたしの手を握り返して、弥生ちゃんが言う。
目が少し潤んでいるのがわかる。

「きっと弥生ちゃんも、お母さんの希望だったんだよ」

そう言うと、弥生ちゃんは少し恥ずかしそうに笑みを浮かべた。

もしかしたら、弥生ちゃんはずっとこのことを気にかけていたのかな。
お母さんが、あまり昔のことを話さないって言っていたから、どこかこの出来事を避けていたために、二人の間に何かが・・・?
と、あたしが考えている間に、またすぐ、弥生ちゃんは寂しそうな表情に戻った。

・・・どうして―?
さっきは一瞬、弥生ちゃんの心の中が見えたような気がしたのに、またもやもやに・・・。











「う~~ん」

「またか?」

「何も言ってないよ」

「言わなくてもわかる」

寝る前に、ベッドの上で呟いたあたしの言葉に、入江くんがすかさず口を挟んでくる。
何も言ってないのに、「言わなくてもわかる」って、本当?
本当にわかってるの?

・・・でも、多分、弥生ちゃん親子のことを考えていたこと、多分わかってるような気がするから、今は何も言わないでおこう・・・。


「ところでおまえ、これ」

「え?」

ふいに手渡されたのは、この前受けたあたしの血液検査の結果だった。

「げ!」

「何が、『げ!』だ。おまえ、おれに見せなかっただろう」

「だって、別に何もなかったから」

「何もないことはない」

「何もないよ。全部正常値内じゃない」

「貧血がギリギリだ」

「こ、細かっ・・・。ギリギリでも、正常値内だからいいじゃない。ところで入江くん、これどこでもらったの?」

「普通に。妻の検査結果を見たいって言ったらくれた」

「それって著作権違反とかにならないの?」

「著作権とか、何の関係もない」

入江くんって、最近なんだかあたしのお母さんみたいだよね。
あたしのこと、よく言えば心配してくれているんだろうけど、悪く言えば見張ってるというか・・・。
どちらかと言うと、いつもは反対の立場なんだけど、きっと今、あたしがやたらと弥生ちゃん親子に執心しているからかもしれないな。
あ!ということは?

「ねえ、入江くん、もしかして嫉妬とかしてる?」

「は?」

「ねえ、そうなの!?そうだったら、誤解だよ。あたしはいつも、入江くんのことが一番だよ~~」

「抱きつくな!」

入江くんの首筋に腕を絡めるあたしを、入江くんは振り払おうとする。
でも、その力はとても弱くって。
きっと本当はそんなに嫌じゃないんだろうなって、わかってしまう。

あたしの方から、入江くんの唇にキスをする。


「なんだよ。機嫌取り?」

「そんなんじゃないよ。大好きって知らせてるだけ」

「ふ~ん」

「でた!入江くんの『ふ~ん』!」

「なんだよ?」

「きっと、なんでもわかってるんでしょう?あたしのこと」

入江くんの瞳をじっと見つめると、入江くんの瞳に小首を傾げるあたしが映っていた。

「あたし、今、何考えているかわかる?」

入江くんの瞳にそう話しかけると、静かにその瞳が近づいてきた。
そして、今度は入江くんからあたしにキッス。
少し長めの熱いキス。
あたしの唇から離れた入江くんの唇は、今度はあたしのうなじのあたりに。

「あ、ちょ、ちょっと」

「・・・ん?」

「違う」

「何が?」

「あたしの考えていること」

「・・・は?」

入江くんが、あたしの身体を離してあたしの顔を見る。

「プリクラ、一緒に撮りたいなって。そう考えていたんだけど?」


しばし沈黙・・・。




その夜、入江くんはずっとあたしに背を向けて眠っていた・・・。




**********

間違えた入江くんwww
ハニートラップに陥ったかな? ( ̄m ̄*)

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2015/03/26(木) 20:57 [Edit
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2015/03/26(木) 23:44 [Edit
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2015/03/27(金) 21:11 [Edit
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2015/03/28(土) 15:42 [Edit
コメントありがとうございます

マロンさま

こちらこそ、連日のコメントをありがとうございます。励みになります(*^_^*)
すこ~しずつ、弥生ちゃん親子の気持ちを覗いていく琴子ちゃんであります。このあたりもすこ~しずつ、今後の話の伏線にもなります。
琴子ちゃんが絡むことで、弥生ちゃん親子がさらに希望のもてる未来になるといいなと思っています♪
入江くん、なかなかいい仕事しているように思いませんか? ( ̄m ̄*)
琴子ちゃんがあちらばかりを見ているせいか、いつも以上に琴子ちゃんをしっかり見ています。
間違えた入江くんとか・・・、私も大好物で萌えるんです。二次で書けて嬉しいですw
by 千夜夢
2015/03/30(月) 15:42 [Edit
コメントありがとうございます

紀子ママさま

こんにちは。今回もコメントありがとうございます。
特に入江くんへのちゃちゃ!wサイコーでした。
や~い、間違えてやんの~、はずしてやんの~♪私も一緒に、その場でちゃちゃいれたいです ( ̄m ̄*)
気になったことはいつも一直線の琴子ちゃん。入江くんが、実は琴子ちゃんのことをしっかり見ていることも気づいてほしいな。そしたらどれだけ愛されているかよくわかるのに(*^_^*)
弥生ちゃんはの気持ち、お母さんの気持ちを少しずつ書きながら、それも伏線にしつつ少しずつ解決に導いていきたいと思います。
なかなか気持ちを伝えるのって難しい(^^;)
一番曖昧なのは書いている私なのですが、またお付き合いくださればうれしいです♪
琴子ちゃんは、レバー食べて乗り切ろう!w
by 千夜夢
2015/03/30(月) 15:49 [Edit
コメントありがとうございます

たまちさま

お忙しい中、来ちゃってくださり、大感激です~♪ありがとうございます~♪
きっと入江くんが、たまちさんを呼んだんです。ちょっと間違えて情けないおれ、きっと大好物だろう?ってwww
過保護な入江くんの正体は、次の回で解明されますが、琴子ちゃんのことをよく見ているわりにはプリクラのことは忘れていたのは不覚でしたよね(^^;)
琴子ちゃんがもし入江くんが居なくなっても、入江くんの赤ちゃんなら絶対産んで育てるっていうのを入江くんが聞いたら、どう思ったでしょうね?きっとさすがおれの琴子と言ってくれるような気がします。
少しずつ伏線を拾っていきながら、ラストに向かってがんばります。
また少しずつですが、歪んだ萌えな入江くんもなんとか組み入れていきたいという野望ももっています ( ̄m ̄*)
by 千夜夢
2015/03/30(月) 15:56 [Edit
コメントありがとうございます

ねーさんさま

お忙しい中、コメントありがとうございます。
最後が、ちょっと情けないやら可愛いやら?の入江くんでした。私もこの描写を入れることで、この話が重くなり過ぎなくて助かっていたりします。入江くんて、使えますよ♪w
琴子ちゃんは、当然入江くんが大好きなのは鉄板なのですが、そのときそのときで気になることに一直線。
そんな琴子ちゃんを入江くんは結構しっかり見ているような気もします。琴子ちゃんが入江くんのことばかり見ているときは、入江くんはちょっと冷たいのにねって思いますけど(^_^;)
少しずつ伏線を拾っていきながら、ラストに近づいていきたいと思います。
by 千夜夢
2015/03/30(月) 16:01 [Edit

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Author:千夜夢

こんにちは。
素敵なイタキスの二次創作をたくさん読ませていただき、ついつい自身も二次創作なるものを書いてしまいました。
ここは、私の超個人的な妄想話置き場です。

原作者様、出版社様等とは一切関係ございません。
私の勝手な妄想話であるため、原作のイメージを大切にされる方、二次創作が苦手な方、二次創作が理解できない方は、ご遠慮ください。
また、ブログ内の全ての文章・いただきものを含む画像等の無断転載・転用を固くお断りします。

まだまだ拙い文章しか書けませんが、以上の注意をご理解いただき、読んでもいいかな~と思われた方のみ、ご閲覧下さい。
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