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2015.03.25 *Wed*

春の産声 2

・・・・・・・・・・・・・・


「私の言葉が、今のあの子を追い詰めているのかもしれません」

後日、弥生ちゃんのお母さんが病院に来たときに、少し話をする時間がとれた。
あたしは、弥生ちゃんが、お母さんにたまに冷たく当たることについて、何か心当たりがないかを聞いてみた。

「よく言っていたんです。『万全を尽くそうが、自分の不注意や失敗であろうが、起こってしまったことは受け入れて対処していくしかない』って。『それしか前に進む道はない』って」

弥生ちゃんのお母さんは、そう言いながら寂しそうに笑った。

「これは自分自身に言い聞かせていた言葉です。何があっても、過去を振り返ってああしたらよかった、こうしたらよかったと思っても、何も解決にもならない。だから、目の前の起きたことをその都度対処しながら、進んで行くしかないって。弥生にも、よく言いました。弥生に言いながら、どこか自分に言い聞かせていた気がします」

「良い言葉ですね。弥生ちゃんが、事故に対してもとても前向きなのも、お母さんのこういう教えが活きているように思います」

あたしは、本気でそう思った。

「いえ、でも、それが今あの子を追い詰めているように思います。そんなまだ16歳のあの子が、今の現実をすぐに受け入れられるわけがありません。なのに、そうしなければいけないと思い込んで、そして時に葛藤があるんじゃないかと思います」

入江くんも、そんな風に言っていたよね。
弥生ちゃんのお母さんも、やはりそう思っているんだ。

「お母さんは、どんなときにこの言葉を遣っていたんですか?」

「自分自身にあてはめて・・・。その昔、妊娠中に弥生の父親が亡くなったときも、熱を出した弥生を預けて仕事に行ったときに、弥生に申し訳ないと思ったとき、また預ける場所がなくて会社を休んで、会社に迷惑をかけたと悩んだとき・・・。いろんな場面で、この言葉で乗り切ってきました」

「・・・大変でしたね」

入院の時に書いてもらった家族歴から家の事情は少し知っていたけれど、弥生ちゃんのお母さんは、本当に大変なことをたくさん乗り越えてこられたのだと改めて思う。

「過ぎたことです。どの場面も、そのときは大変でしたが、周りにも助けられてなんとかやってきました」

「乗り切ってこられたのは、その言葉のパワーもありますね。やっぱり良い言葉ですよ。あたしも、いろいろな場面で遣ってみたいな」

「そうですね。私にも、とても気持ちを切り替える良い言葉だったと思います。でも、弥生には・・・、あてはまるかわかりません。やはり、この言葉が、私の思いが、今の弥生を苦しませているように思います。まだ弥生には、荷の重い言葉のように思います。あの子はまだ・・・、まだ大人じゃないから・・・」

「そんな・・・。それに弥生ちゃんは、大人じゃないけれどとてもしっかりしています」

「しっかりしているのも、しっかりしなければと思わせていたのかもしれません」

「お母さん・・・」

弥生ちゃんのお母さんの一言一言から、母としての心の苦しみが伝わってくるようだった。
愛する人を思う気持ちは、とてもよくわかる。
ただ、子どもを思う母親の気持ちというものを、あたしはどこまで理解できるのか。
自分を責める母親を、あたしはどこまで分かり合うことができるのだろうか・・・。


「でも、弥生ちゃんが前向きなのは、無理をしているようにあたしには思えないんです」

あたしなりの思いを言ってみる。

「確かに。『生きてて良かった』と言うあの子の言葉に嘘はないと思います。心から思っていると思います。私だってそうですから!生きててくれて本当に良かった!もうそれだけで十分です」

良かった。
弥生ちゃんのお母さんも、そう思っていてくれたんだ。

「あたしも、あたしもそう思います。弥生ちゃんも、これから夢も希望も叶えられるって言ってました」

「でも・・・」

弥生ちゃんのお母さんの表情が急に曇る。
ぐっと唇をかみしめ、そして、絞り出すような声で言う。


「代われるものなら、代わってあげたい・・・。事故に遭ったのが、私だったら・・・良かった・・・」

「・・・・・・」


涙を流し、肩を震わせる弥生ちゃんのお母さんを、あたしは、ただ・・・。
ただ、無言で抱きしめるしかできなかった。
もしあたしが弥生ちゃんだったら、「そんなこと言わないで」とお母さんに訴えるかもしれない。
でももしあたしがお母さんだったら・・・、やはり「代わってあげたい」と思うかもしれない。
だから、何て言葉をかけていいかわからない。
あたしは、一人の親子の前で、本当に本当に無力だ・・・。









「冴えない顔をしているな」

「・・・入江くん」

廊下をぽつりと歩いていたら、入江くんに声をかけられた。

「また、弥生ちゃん親子のこと?何かあった?」

察しの良い入江くんは、あたしが弥生ちゃん親子のことを考えていると、すぐにわかったようだ。

「何かあったというか・・・。もうどうすることもできないというか・・・。でも、別に悪い方向に向かっているわけでもないから・・・。でも、何か、気になって・・・」

「考えすぎたところで、どうしようもない。少し様子見るしかないだろ」

「う・・・ん・・・」

その通りだと思う。
だけど、あたしって「様子見」がとても苦手。
じっと待ってられないタイプなの。

「ところでおまえ、シフトまた多く入れたんだって?」

「え」

「さっき、桔梗に聞いた」

「あ、うん。そんなたくさん入れてないけど、少しだけすこ~しだけね」

「ふ~ん」

なんとも気まずい空気。
だって入江くんの「ふ~ん」は、いつもなんでもお見通しだっていう意味と一緒なんだもん。
きっとあたしが、弥生ちゃん親子のことを心配して、シフトを多く入れたこともきっとお見通しなんだろうな。

「昨日の夜、おまえのいびき、うるさかった」

「えっ!」

ふいに入江くんにそんなことを言われ、あたしは思わず立ち止まった。

「寝相も悪かったし、何度もベッドから落ちそうになってた」

「そ、そうなの?」

「おれも気になって、何度も目が覚めた」

「ご、ごめん・・・」

あたしったら、寝ているときまでそんな迷惑をかけているなんて・・・。

「疲れすぎているんじゃない?」

「え?」

「身体も心も、少し疲れているんじゃないか?」

「そんな・・・。あたしは、疲れてなんか」



「あ、入江先生夫妻発見!」

そこに明るく大きな声。

「弥生ちゃん」

振り返ると、松葉杖で歩いてくる弥生ちゃんが居た。

「弥生ちゃん、どこ行ってたの?」

「トイレ。自分でトイレ行けるようになって、すっごいうれしい」

「車椅子は?」

「こっちの方が楽。だっていちいち座ったり立ったりしなくていいんだもん」

「今日も元気そうだね」

入江くんが、さっきの仏頂面から優しい笑顔になって弥生ちゃんに話しかける。

「はい。今日も元気です。そして、今、また元気をもらいました~」

「何?」

と、爽やかに聞いた入江くんに、弥生ちゃんが大きな声で返す。


「入江先生と琴子さんって、同じベッドで寝てるんですね~!」


思わず顔を見合わせて絶句するあたしと入江くん。

「だって、琴子さんのいびきとか寝相とか、きゃは、聞こえちゃった。わ~、ダブルベッドで寝てるんですか?ラブラブだ~」

入江くんは一瞬目を瞑り、そのあと意味なく天井を見つめた。
入江くんって、こういう話題がかなり苦手。
ましてや女子高校生にこんな話を振られて、困惑きわまりないことだろう。
でも、あたしは

「うちにダブルベッド特注なのよ。すっごく可愛いの」

こういう話題は、とっても大好き。むふ。

「琴子」

遮る入江くんの不機嫌声もなんのその。
あたしのテンションは上がっちゃう。
そして弥生ちゃんのテンションも上がっている。

「え~。どんなダブルベッドなの?ヨーロッパのお城にあるみたいなの?」

「ちょっと近いかも」

「きゃ~~~、それに二人で眠ってるんですか~。仲良し~~」

「そうなの。仲良しなの。でもね、プリクラは一緒に撮ってくれないの」

と言いながら、ちらりと入江くんの方を見る。
入江くんは、再び天井見つめながら大きなため息吐いていた。

「入江先生、琴子さんと一緒にプリクラ撮ってあげて下さいよ~」

「あ、悪いけど、おれは、仕事があるんで」

入江くんは、顔もあわさずその場を去ろうとする。
ふふふ。でも、こうして、ちょっと困った顔の入江くんも、実はあたしはとても大好き。
あたしって、ちょっと萌えが歪んでいる?


「入江先生~~、琴子さんとプリクラ~~」

立ち去る入江くんの背中に、弥生ちゃんがまだ大きな叫んでいる。
嬉しいな。
あたしのために、こんな大きな声で頼んでくれるなんて。
弥生ちゃんのおかげで、久々に困惑顔の入江くんを見ることができたよ。
あたし的には、とっても満足。

「弥生ちゃん。ありがとう」

弥生ちゃん、本当に良い子。優しい子。
あたしは、弥生ちゃんをぎゅっと抱きしめた。
抱きしめた弥生ちゃんは、ほんのり甘い桜のような匂いがした。
そしてその匂いは、やはりさっき抱きしめた弥生ちゃんのお母さんの香りと似ている気がした。
抱きしめた感触もとても似ている。

年も生活パターンも違う親子―。
だけど、なぜこんなところに共通点があるのか、不思議でたまらない瞬間だった。





*********

昨日、日キスのDVDが予定より一日早く届きました。
わ~~、なんてタイムリー!(※?)
ってことで、続きを勢いよく書きました。
DVDは、お昼休みにあたる時間に、少しずつ観ていきます♪

COMMENT

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2015/03/25(Wed) 19:39 | [Edit
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2015/03/25(Wed) 20:38 | [Edit
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2015/03/25(Wed) 21:12 | [Edit
コメントありがとうございます

マロンさま

こんにちは。子供に先に日キスDVDを観られてしまって、少し、いやかなり拗ねている千夜夢です(^^;)
少しずつ、弥生ちゃん親子について知っていく琴子ちゃんの回でした。スポットはイリコトよりもオリキャラに当たってしまっているので、入江くんもなるべく毎回登場させるようにしていますw
琴子ちゃんは、気になることは様子見できないタイプですから(^^;)どんどん弥生ちゃん親子の中に割って入っていますね。
いつもしっかり読んで下さって、本当に嬉しいです。ありがとうございます。
2015/03/27(Fri) 12:30 | 千夜夢 [Edit
コメントありがとうございます

たまちさま

こんにちは。たまちさんも日キスDVD、うちより一日早く届いたのですね。まだ観てない・・・は同じでありますよ(^^;)
たまちさん、とてもお忙しくなりますね(>_<)お身体無理ないようにしてください。こちらは、気分転換のときにぜひぜひ訪問してください。コメの心配などノープロブレムです!しかしたまに、お元気な様子お知らせ下さればうれしいです(*^_^*)がんばって下さいね♪
子を思う親、そして子も親を思っていると思います。弥生ちゃん親子を通して、琴子ちゃんがどんな関わりをもつのかをちゃんとこれから説明できたらいいなと思っています。なかなか難しいですが(^^;)
入江くん、私も笑えるなと思っていました。さりげなくというより、気になって仕方なくて琴子ちゃんの周りにいる感じですよね。昔は女嫌いとか言われていて、最近はどうなの?って感じですが、やはり女子高生につっこまれると苦手な様子wこういう入江くん、私は結構好きだったりします ( ̄m ̄*)
2015/03/27(Fri) 14:13 | 千夜夢 [Edit
コメントありがとうございます

紀子ママさま

こんにちは。紀子ママさんも、日キスDVD届いたんですね♪私もテンションあがってますが、まだ最終回しか観ていません(ツッコンで下さい。なぜそこから観る!?と。理由は先にどんどん子供に観られてしまって、焦ってせめて最終回は自分が一番に!という・・・幼稚な発想からです)
今回、自分でも書きながら、そうそう琴子ちゃんって「様子見ができない」っていうのは鉄板だなって思っていました ( ̄m ̄*) だから気になる人を、絶対放っておけない。入江くんに対してもそうだったんだと思いますけどね。
子供の辛いことって代わってあげたい!って親なら思いますよね。特に病気や怪我はそう思います。
一組の親子を見ながら、琴子ちゃんも何か感じることがあると思います。それがうまく話に活きたらいいな~と思いながら、相変わらず流されるまま書いています(^^;)
「何も持たずに~」!わ~、私も実は自分でこの話を思い出していました。いつもお話を覚えていて下さって、本当にありがとうございます。嬉しいです。少し被るところもあると思うのですが、また違うシチュで展開していきたいと思います♪
2015/03/27(Fri) 14:20 | 千夜夢 [Edit

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Author:千夜夢

こんにちは。
素敵なイタキスの二次創作をたくさん読ませていただき、ついつい自身も二次創作なるものを書いてしまいました。
ここは、私の超個人的な妄想話置き場です。

原作者様、出版社様等とは一切関係ございません。
私の勝手な妄想話であるため、原作のイメージを大切にされる方、二次創作が苦手な方、二次創作が理解できない方は、ご遠慮ください。
また、ブログ内の全ての文章・いただきものを含む画像等の無断転載・転用を固くお断りします。

まだまだ拙い文章しか書けませんが、以上の注意をご理解いただき、読んでもいいかな~と思われた方のみ、ご閲覧下さい。
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