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2015.02.03 *Tue*

愛妻物語 5



愛の語り部入江、再び――w
・・・・・・・・・・・・・・・


「T大は受けてないよ」


琴子の顔が青ざめて、さすがにおれの大学受験にもあまり興味のなさそうだったおふくろの顔さえも青ざめる。
琴子の親父さんといえば、どこか意識が完全に飛んでいっている顔をしている。

そういう当事者のおれは、妙に冷静だったけど。


別に琴子の盲腸を盾にとって、うやむやにT大を受けることを蹴った理由にしようとも思っていなかった。
あれは本当に成り行き。
ああいうときに絶妙なタイミングで盲腸になってしまう琴子に、あとから「さすが」とは思ったが、別に琴子に振り回されたとも思っていない。
あれは、自分で決めたことだったから。


それよりも、ただあのときは、本当におれは・・・・・・。










「ったく、どういうんだろーな、ケーキ8個だって」


明日から三日、おれが神戸で医学会だというある日、琴子は吐き気と微熱を訴えた。
原因は「食い過ぎ」だと推測できるが、微熱があることが少し気になる。
普段は元気で風邪さえも滅多にひかない琴子だけに、なんでよりによっておれが家を空ける前日に・・・。

「明日は、消化の良いものしか食べるなよ」

「・・・うん」

「声が小さい!」

「はあい。もう、明日から入江くんが居なくて寂しいのに、怒った声ださないで」

琴子が頭を抱えて言う。

「頭も痛いのか?」

「頭は痛くないよ」

「だったら早く寝ろ」

「やだ」

「はあ?」

「だって、明日から三日も入江くんが居ないのに、もっともっとしゃべっていたいよ」

「具合悪いんだろ!?さっさと寝ろ」

「入江くんと離れている方が、もっと具合悪くなるよ~」

そんな可愛いこと言われると、頭の中で何を優先していいのかわからなくなってくる。
琴子の甘ったるい声は、おれの感覚を麻痺させる薬のようなものだ。

「寝ろって」

おれはベッドに座っている琴子を無理矢理押し倒した。
「きゃっ」と言いながら、琴子は枕の上に頭を沈める。


「まさか、お医者さんごっこの続きをしたいって誘ってるのか?」

琴子の顔を覗き込み、おれはにやりと笑いながら言う。
琴子の顔が、即座にボッと赤く火照る。

「そ、そんなわけでは・・・///」

「じゃ、なんで寝ない?」

「だって・・・、すぐに寝たら寂しいんだもん」

シーツを指で摘み、口元あたりを隠しながら琴子は言う。

「ああ、そうかい」

誘ってるじゃん、琴子。十分に。
おれは琴子の目をじっと見つめる。
じっと見続けて、琴子が堪忍したかのように目を瞑るの見届けると、琴子の唇を啄んだ。
唇を何度も啄むと、琴子はおれの首筋に腕を巻き付けてきた。
そしておれもベッドの上に身体を全部預けると、琴子の首筋に唇を舌を這わす。

熱い。
琴子の首筋は、明らかに、いつもより熱かった。


「ったく、だから早く寝ろって!」

おれは琴子から身体を離し、シーツを琴子の顔の辺りまで勢いよく掛けてやった。

「入江くん・・・」

赤い顔の琴子。
微熱のせいか。
途中でお医者さんごっこをやめてしまった恥ずかしさか。

「帰ってくるまでに、しっかり治しとけよ」

「う・・・ん」

琴子はシーツを目の下までひっぱりあげて、おれのことを潤んだ目で見た。
そんな目で見るなよ。
またその首筋に吸い付きたくなる。
でも、今は、そんなことより・・・。


いつも元気なおまえが微熱をだしていること。
そしてそんなおまえを置いて、明日から家を空けることが・・・・・・本当に心配なんだ。










「はああ・・・」


琴子は、大きなため息を吐く。
おれは琴子の額から流れる汗を、タオルで拭き取ってやった。

「じゃあ、入江さん、次の陣痛がきて波が去ったとき、分娩室に移りましょう」

「わあ!もうすぐですね!」

「そうよ。もうすぐよ」

今、苦痛の顔を浮かべていたのに、分娩室に行く準備ができたと聞いた途端、琴子は満面の笑みを浮かべた。

「入江くん、ちょっと水飲みたい」

「ああ」

おれは琴子に吸い飲みを取ってやる。

「ああ、それじゃなくてあっち」

琴子は、ペットボトルの方の水を指さす。

「このまま?」

「うん。ちょっとたくさん飲みたい」

「元気だな」

おれは笑いが漏れる。

「うん、元気よ!」

ぐびぐびっとペットボトルを飲み干す琴子は、とても良い顔艶をしている。
これからの分娩に向けて、この琴子の様子は、おれをとても安心させてくれる。


「入江さん、分娩室に移動するのに、車椅子使いましょうか?」

看護師が琴子に聞いてくる。

「あ、あたし、歩いて行けますよ」

「そう?」

「はい。今も歩けそうだから。大丈夫です」

「じゃあ、分娩室まですぐだから歩きましょう」

「はあい」

(おいおい、大丈夫かよ)、と心の中でおれは思いながらも、琴子の元気な意志に口は挟まなかった。

そしてまた琴子の陣痛の波がくる。
苦痛の表情を浮かべながらも、琴子は、しっかりリズムを整えながら呼吸する。
おれは琴子の手を握り、決して伝わることのないその痛みを、必死で掴もうとする。
そしてまた波は去る。


「はい。じゃあ、移動しましょう」と看護師が琴子を起こそうとする。

「はい、え?あ、い、入江くん!?」

起き上がろうとする琴子を、おれは抱き上げた。

「まあまあまあ、素敵!じゃあ点滴は私が持ちますね」

看護師が気を利かしてうまく点滴を移動させてくれ、おれは琴子だけをしっかり横抱きにすることができた。

「入江くん、いいよ。あたし、大丈夫だよ」

「黙ってろ。また陣痛来るぞ」

「でも、あたし、今、人生最大に重い!!」

「じっとしてろって」

子どももお腹にいるんだから、その分重いのはあたりまえじゃねーか。
おれだってそれくらいしっかりわかっている。

分娩室までは、ほんの数分の距離。
おれはしっかりと琴子を抱き上げると、一歩一歩踏みしめるように歩いた。
決して落としてはいけない、おれの大事な奥さんと子ども。
がんばっている琴子に、せめておれも少しは何かを一緒に背負いたいという気持ちがあった。


「懐かしいな。昔、あたしが盲腸になったときも、入江くんがこうして病院まで運んでくれたね」

「ああ。そうだな」

偶然だな。
おれも、今、それを思い出していた。

「あと、高校のときの体育祭!あ、テニスの試合のときにも入江くん、あたしを運んでくれたことあったよね」

「ああ、そうだな」

そういや、おれって、昔から琴子を運んだりすること多かったな。
そう思うと、おれたちはあの頃からいろいろ「縁」があったのかもしれない。

「入江くんって、本当にあたしが困ったときの『人間ストレッチャー』だね」

・・・はあ?人間ストレッチャー!?

「・・・頼む。そんなネーミングで呼ぶな。腕を下ろしたくなる」

「ああ、ごめん、ごめん」

汗がでる。
信じられない。
おれは少し感動的におれたちの軌跡を「縁」だと思ったのに、おまえは「人間ストレッチャー」などと・・・。
そしてさらに空気の読めない琴子は、こんなことも言い始める。

「そういえば、あたし実習で倒れて、啓太に運ばれたこともあったよね」

「・・・・・・」

・・・なんで、今、それを思い出す!?

「あのとき、いろいろあったけど、入江くんがあたしたちにやきもちやいてくれて、きゃっ!今、思い出しても、嬉しいこといっぱい」

思い出したくもない、黒歴史だ・・・・・・。

「ああ。走馬燈のように、あたしたちの歩んできた道が、この入江くんの人間ストレ・・・じゃなくて、お姫様抱っこによって思い出されて、あたし、本当に幸せ~」

「少し黙ってくれ。重てーんだよ」

興醒めだ。
おれも、走馬燈のようにおれたちの軌跡を思い出していたのに、琴子のやつ、要らぬ出来事まで思い出しやがって・・・。


分娩室につくと、おれはゆっくりと琴子を分娩台の横のベッドに下ろした。
琴子はすぐに、また陣痛の波が来る。
ベッドの上で痛みを受け入れる琴子の手をおれは握る。
ぐっと握る琴子の指、爪がおれの皮膚に痛みを伴いながら突き刺さる。
でもこのくらいしてくれた方がいい。
おれにも少しくらいの痛みを分けてくれた方が。


「入江くん・・・」

また陣痛の波が引き、琴子がおれに笑顔をみせる。

「なんだか、入江くんの方が、痛そうな顔をしている」

「・・・え?」

「入江くんって、実はいつもすっごくあたしのこと、心配してくれているよね」

痛みがあったせいか、琴子は少し目尻に涙を浮かべながらそんなことを言い出す。

「あたしが盲腸のときも、それに実習で倒れて啓太に運ばれたときも、心配してくれたんだよね。今だって、ここまで抱いて運んでくれて・・・入江くんって、意外に心配性」

少し涙を浮かべた顔でくすりと笑った琴子を見て、おれはすぐに言葉がでなかった。


「入江さん、分娩台に移動しますよ。ご主人は、立ち会いなさるなら、今のうちにあちらにある服を着て下さい」

看護師にそう言われ、おれは握っていた琴子の手を一旦きゅっときつく握ると、その手を離した。
そしてその場を少し離れる。


琴子の分娩は、今までの経過、そして今の様子を見ても、多分順調に終わるだろうと思える。
きっと母子ともに元気な出産になることだろう。

だけどおれの手は、足は、小刻みに震えている。
必死でそれを見せないように琴子の手をしっかり握り、足を踏ん張っていた。
・・・おれが、心配性――?
琴子はいつからそれに、気づいていたのだろうか。




「次の陣痛がきたら、いきんで下さいね」

「はい」


もうすぐ赤ん坊に出会える。


楽しみだ。
心配だ。
楽しみだ。
心配だ。心配だ・・・。



「きゃーっ!入江くん、生まれたよ~~!入江くんの赤ちゃん、生まれたよ~~!」



赤ん坊の声より、琴子の声の方が大きい。
ああ。ったく。
本当に、もう・・・。

おまえってやつは、人にさんざん心配をかけながらも・・・・・・、なんておれにいつも幸せを運んでくれるんだ!


「入江くぅ~・・・ん」


分娩台の上で、口を少し尖らせる琴子。
は?まさか、ここでキスの要求?
察した医師や助産師が、少し目を背ける。

仕方ね―な。


「がんばったな琴子。ありがとう」


まさかおれが、こんな言葉吐いて、分娩台の琴子に人前でキスをするなんて・・・。


でも、幸せだから。
いいことにするか。




**********

かなりバタバタしていて、せっかく到着した日キスのDVDもまだ全部観ていません。
が、少し観た場面から、思わずこんな妄想を・・・。
もうちょっと琴子ちゃんのことには心配性な入江くんを歪んで書きたかったのですが!
この話の性質か、愛の語り部調に終わってしまいました・・・。若干無念。

COMMENT

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2015/02/03(火) 17:06 [Edit
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2015/02/04(水) 10:43 [Edit
コメントありがとうございます

たまちさま

たまちさん、早くに更新気づいて読んでくださり、ありがとうございます。
愛の語り部・・・少しかゆさを感じながらも、がんばって(?)入江くんに語らせました(*^_^*)
そうそう、琴子って遊びに行く前日に熱を出す子供のようなものかもしれませんよね。入江くんは、子を持つ前からそんな経験させられているのですから、ある意味琴子ちゃんが愛しくてたまらないのかもしれません ( ̄m ̄*)
なかなかうまく描けなかったのですが、入江くんはツンツンして突き放していますが、意外に心配性だと思っています。そしてたまちさんの言われるように、意外に過保護!wああ、でも、そういう入江くんが、私は好きですね~♪
日キスは、子供に先に観られてしまいました(T_T)結構集中して、話に入り込みながら観たいので、ゆっくりした時間と精神が必要だと思っています(^_^;)でも、今まで観た場面は、原作を思い起こしてくれるところが多くいいですね~♪レビュー、読みにうかがいますね♪
by 千夜夢
2015/02/05(木) 15:38 [Edit
拍手コメントありがとうございます

sarasaさま

こちらこそご無沙汰しています~!なんとかお元気な様子、うれしいです(*^_^*)そして読んで下さっていて、さらに超嬉しいです!ありがとうございます。
もう一回、ぜひお産を!(笑)私ももうよく覚えていないので、そのあたりはさらりと流したつもりの今回の陣痛シーンです(^_^;)とりあえず入江くんが、琴子ちゃんを大切に思って心配していて、琴子ちゃんもやっと気づいた?ってところを書きたかったのです。
私も更新があまりできていなくて申し訳ないのですが、でもまたぜひぜひ訪問してやって下さいね。近況うれしかったです♪
by 千夜夢
2015/02/05(木) 15:42 [Edit
拍手コメントありがとうございます

camasさま

歓喜のおことば、ありがとうございます♪
楽しんでいただき、私の方が癒されますよ(*^_^*)私も近い年齢であります。が、若いイリコトを妄想して楽しんでいます。
また遊びに来てやって下さいね。
by 千夜夢
2015/02/05(木) 15:44 [Edit
ねーさんさま

ねーさんさま

楽しんでいただき、嬉しいです。爆笑してくださいました?w
大変な陣痛シーンなのに、琴子ちゃんのおとぼけは衰えませんね。入江くんも、いろいろ浸りたいことがあるのに、いつも現実に引き戻されw、お疲れ様といった感じです。
そうですね。入江くんには「黒歴史」な出来事も、琴子ちゃんには愛すべき出来事ばかりだったと思います。
あとは琴子ちゃんに、入江くんは結構昔から言葉や態度に見えない部分に、優しさや心配が溢れていたことをもっと思い出して幸せな気分になってほしいです(*^_^*)
短編でなかなか歴史をたどるのは難しいですが、少しでもその歴史を感じていただき嬉しいです。ありがとうございます。
by 千夜夢
2015/02/05(木) 15:50 [Edit
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2015/02/09(月) 21:24 [Edit
コメントありがとうございます
吉キチさま

お久しぶりです!コメントとてもうれしいです。それなのに遅いお返事なってしまってごめんなさい(>_<)
もう吉キチさんのコメントに目が覚めましたよ!本当に今回の話は「お腹」つながりでしたね。「盲腸」「食べ過ぎ」「出産」・・・もう、びっくりです!!全然意識していなかったのですが、こんなつながりがあったことになんだか感激!!気づかせていただきありがとうございます。でももしかしたら、この三つの出来事をチョイスしたのは、どこかにそんなつながりを私自身が感じていたのかもしれません。なんて!都合良く言ったり!(^^;)ああ、でも、すごく感動です。教えて下さりありがとうございます。
IQは高いけど「愛Q」は低かった直樹って表現もステキ!その通りですよね。琴子ちゃんと一緒にいることで、少しずつ愛Qも高まってきた入江くんが、子供ができたあとはどこまでその愛Qをのばしていくんでしょうね~、なんだか私まで楽しみな気持ちです(*^_^*)
今もかな~り多忙で(^^;)、相変わらずのぐだぐだ更新ですが、どうぞ今年もこちらこそよろしくお願いします。
また時々、お顔出して下されば嬉しいです♪
by 千夜夢
2015/02/13(金) 15:17 [Edit

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プロフィール

千夜夢

Author:千夜夢

こんにちは。
素敵なイタキスの二次創作をたくさん読ませていただき、ついつい自身も二次創作なるものを書いてしまいました。
ここは、私の超個人的な妄想話置き場です。

原作者様、出版社様等とは一切関係ございません。
私の勝手な妄想話であるため、原作のイメージを大切にされる方、二次創作が苦手な方、二次創作が理解できない方は、ご遠慮ください。
また、ブログ内の全ての文章・いただきものを含む画像等の無断転載・転用を固くお断りします。

まだまだ拙い文章しか書けませんが、以上の注意をご理解いただき、読んでもいいかな~と思われた方のみ、ご閲覧下さい。
よろしくお願いします☆

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