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2014.10.14 *Tue*

優しく積もる淡い恋



イタキス期間2014

イタKissで恋したくなるお題」からのチョイスです。
・・・・・・・・・・・・・・・・


しんしんしん


という音で、本当に雪は降っているのだろうか。
窓から見える景色は、真っ黒の世界の中にただただ白い雪ばかり。
隣はどんな家なのかマンションなのか、前はどんな道路だったのか、前に家はあったのか。
今となっては何も覚えていないので、今確かめたいと思うけれど、やはり真っ黒な世界に白い雪がしんしんしんと見えるばかりで全くわからない。
あ、やっぱりしんしんしんって感じだな。
雪はしんしんしんがぴったりだと思う。
どんどんどんどん降り積もっていく。
そんな感じがしんしんしんにぴったりだと思う。


「入江くん、遅いな。大丈夫かな・・・」

雪しか見えない窓から外を見ながら、あたしは声に出して呟いた。
静かな部屋にちょっと響いたそのあたしの声が、今が現実であることを確信させてくれる。

今日は雪の日のバレンタインデー。
そう言えばとてもロマンチックだけど、ロマンチックからほど遠い雪が、都心の交通網を止めてしまった。
それであたしは、入江くんの一人暮らしのマンションに・・・・・・。
まさか泊まるなんて思ってもみなかった。
まさに雪が起こしたミラクルマジック!ミラクルワールド!ミラクルシチュエーション!ミラクル、ミラクル・・・他にミラクルつけて今の心境にぴったりなのは、えーっと、えーっと。

こうしてわけわからないことばかりに執着しているのは、今あたしがかなり動揺しているせいだと思う。
入江くんのマンションで入江くんがシャワーを浴び、そしてあたしもシャワーを使わせてもらい、そしてそして・・・なぜかこんな雪の中、入江くんはあたしの食べるものを調達するために外に出て行ってしまった。
入江くんったら、シャワーも浴びたあとなのに身体が冷えちゃうよ。
飯が切れてると入江くんが言っていたけど、さっき台所をみたらお米だけはちゃんとあったよ。
だったらなんで?シャワーも浴びたあとなのに外に出て行ってしまったの?こんな雪の中。

もしかしたら・・・、もしかしたら・・・と、またあたしの頭の中は妄想でいっぱいになる。
シャワーを浴びて着替えたときに、入江くんは気づいたのかもしれない。


やべ!おれ、古い下着しか持ってねーな。下着を新しいのに替えないと--。


やだーーーっ!///
なんでーーーっ!///
入江くんったら、こんなときに新しい下着を買いに行ったの!?
あたしだって、あたしだってふいのお泊まりだから、下着を替えるどころかシャワー浴びても、朝から同じ下着なのよ!?
それなのに入江くんだけずるい!あたしだって、あたしだっって・・・・・・はっ!
ま、まさか・・・入江くん、あたしの下着も買いに行ってくれたのでは・・・。


しんしんしん


窓から途絶えることない現実の雪を見ていると、ちょっと正気に戻った。
そんなことあり得るわけがない。

でも、入江くんったら、本当にシャワーを浴びたというのにこんな雪の中・・・どこまで行っちゃったんだろう?
というか、あたし、さっきから「入江くんがシャワーを浴びた」という事実を何度繰り返している?
もう、どうしてそこにいきついちゃうんだろ。
でも、入江くんったら、マンションに着いたとたんシャワーを浴びて、そしてあたしにもシャワーを進めて・・・。
はっ!ま、ま、ま、ま、まさか・・・・・・・。


琴子との初めての夜。やはり、買いに行くしかねーな、アレ--。


やだーーーっ!///
きゃああああああーーっ!///
アレってなあに?アレって何よ?アレって何なのよーーーーーっ??


しんしんしん


窓から途絶えることない現実の雪を見ていると、ちょっと正気に戻った。
アレってあたしが、勝手にいやらしく想像しただけだ。
それで一人興奮しているなんて、あたしったらなんてスケベなの!
入江くんに限ってそんなことはない。
そんなことは夢でも絶対ないと、リアルなあたしはよ~く知っている。
よく知っていながら、だけどあたしは・・・、これは妄想でなく、今ある決意を心の中でしている。

入江くんとは同じ家でずっと暮らしていたけれど、二人きりで家で一夜を過ごしたのは、これで二回目。
一回目は、あたしが高校生のとき。まだ入江家で暮らし始めて間もない夏休みのことだった。
入江くんは、あたしをからかって


「夜這いしに来たんだろ」
「安心しなよ。ハジかかせないから」


って。
あたしったら、大好きな入江くんにそんなことを言われたというのに、そのときは本気で焦ってしまって


「あたし達、まだ、は、早いと思うの。ま、まずは、健全なおつきあいを・・・」


って、拒否してしまって・・・。
ま、入江くんの冗談だから、許可したところでそれ以上のことはなかったでしょうけどね!
でもね、今なら、今日ならあたし・・・。


もし入江くんに迫られることがあれば、あたし、受け入れようかなって思っている--。


そう思えるのは、あれからたくさんの月日が過ぎたからかもしれない。
相変わらずあたしの片思いに過ぎないけれど、だけどあの頃とはどこか違うあたしたちがいると思う。
高校時代からの進路の話、悲惨な入江くんの受験、あたしの盲腸事件・・・。
卒業、はじめてのKISS、大学生活、同じテニス部、ライバルの登場、一緒にボートに乗りデート(?)して、そして「きらいじゃない」って言ってくれた!
入江くんの一人暮らし・・・そして・・・今日、入江くんの一人暮らしのマンションに泊まる・・・。

こんなにたくさんのことがあたしたちの間にはあったのよ。
積もり積もった思い出たち。これだけは、もう消すことができない。
そう。今日の雪のようにしんしんしんと、静かに静かに(いや、実際静かではなかったかな?)あたしたちが育んできたものだ。
その思い出たちと共にあたしは・・・入江くんを受け入れたいと思う。
今日は、今日は、前のように怖がることなく、逃げることなく、あたしは、あたしは猛然と立ち向かって--


「ただいま」

「ひーーーーっ!?」

「なんだよ、その声。ああ、寒かった。すげー、雪だった」

「入江くん・・・どこに行ってたの?」

「は?どこって、おまえの食い物買いに行ってたんだろっ!?」

「た、食べ物だけ・・・?」

「他に何を?」

「・・・・・・・」


積もり積もったあたしの妄想は、ここですっかり受け入れるよりも前に打ち切られてしまった。

その夜、やはり何もなく、だけど入江くんがあたしのことを嫌いではないこともどこか再確認できた夜だった。
入江くんはきっと気づいていないだろうけど、あたし夜中に一回目が覚めたんだよ。
ぼんやりした薄暗い部屋の中で、あたしの横に入江くんが眠っていることを確認して飛び起きそうになって!
だけど


しんしんしん


という外の雪の声が聞こえるような気がして、ああ、また素敵な思い出が一つ増えていく、また一つ、幸せな出来事があたしの中で積み重ねられると思うと嬉しくて安心して・・・。
入江くんのTシャツの裾をつかんで、そのままあたしは朝までぐっすり眠ってしまったんだ。






「すっごーい雪景色。昨日の吹雪がウソみたい」

朝になると雪はすっかり止んでいた。
でもあたりは一面の雪景色。
歩き出すと、ずぼずぼと音をたててブーツが雪に埋まっていく。

「きゃーっ、すっごーい!おもしろーい!」

「ふざけてると、すっ転ぶぞ」

入江くんのマンションから、二人で大学に登校するのがなんとも新鮮で、うれしくって!
やだ、あたしたち、まるで学生同棲してるみたい?
周りから、そう思われてる?うらやましいとか思われてる?

「おい、琴子、そこ凍ってる」

「え?きゃああああ」

「危ないっ!」

慣れない雪の中を歩き、調子に乗っていたあたしは、マンホールの上でツルリと滑りかける。
しかし、そんなあたしを入江くんが

「危ないだろ」

「う、うん・・・」

騎士(ナイト)のように腕でしっかと腰を抱きしめて、支えてくれた。
きゅんと胸が高鳴る。

「だから、おれのスニーカー履いていけって言ったのに」

「でも、ブーツなら、長靴代わりになると思って・・・」

「そんな細いツルツルしたヒールが、長靴代わりになるわけねーだろ」

入江くんは怒っている。
言うことを聞かなかったあたしのことを、本気で怒っている。
だけど手は、あたしの手を繋いで、滑らないようにしてくれている。

「えっと、やっぱりブーツは滑るね。気をつけようっと」

「ったく」

うん。ブーツは滑るよ。怖いよ。
ってことをさりげなくアピールしながら、あたしは、入江くんが手を離さないことを心の中で祈った。
手を繋いで登校だなんて・・・、もう、もう、こんなことはじめて!
手袋しているのがちょっと残念だったけど、でもその手袋を通して、入江くんの指の感触が伝わってくる。
細くて、でもどこかごつっとしていて、そして何より、ぎゅっとあたしの手を握ってくれている優しい手。
あたし、一生この手を離したくない。
ああ、雪の日のミラクルマジック!ミラクルワールド、ミラクルシチュエーション、ミラクル、ミラクル・・・。
なんて素敵な思い出がまた、積み上げられたことだろう。



「おはよう、入江。あれ?一緒に?」

大学が近くなると、入江くんの友達らしき人に声をかけられる。
その人は、あたしたちの繋いでいる手をじーっと凝視した。
どうぞ。どうぞ。もっとじっと見て下さいね。
あたしたち、入江くんのマンションから手を繋いで一緒に登校してきたんです。
あたしたち、昨日一緒のベッドで寝たんですよ!
入江くんは優しいから、あたしを今、転ばないように手を繋いでくれているんですよ!
あたしは目で、必死でこの幸せ感をアピールした。

「いつまで、繋いでる気だ!」

「・・・へ?」

いきなり入江くんに手を弾かれ離された。

「もうこの辺は、雪が積もってないし、凍ってもいないから大丈夫だろ。いつまでもくっつくなよ」

「は?」

入江くんから繋いできてくれたくせに!?ひどーいっ!
それから大学に入っていくと、やたらといつになくあたしたちは注目の的で・・・。
そして掲示板には、例のものが・・・。
あたしたちが昨日愛の一夜を過ごしたというおきまりのポスターが・・・。

その後の入江くんの態度は、思い出には残したくない。










「あ、入江くん、雪!雪が積もっているよ!」


朝、窓を開けると一面は銀世界だった。
昨日の夜、窓から外を見ていたときからその予感はしていた。
その様子は、前に入江くんのマンションに泊まったあのバレンタインデーのときの雪の感じとよく似ていたからだ。
しんしんしんというあのときと同じ音をあたしは聞いた。
だからきっと今日は、あのときの朝と同じように降り積もっていると確信していたのだ。

あれから何年たったことだろう。
あたしたちは、二人で何回、何百回、ううん何千回一緒に朝を迎えただろうか--。


「交通網を調べないとな」

と、起きたばかりの入江くんは無造作にベッドのそばに置いてあるスマホを手に取った。

「ああ。雪は止んでいるせいか、交通機関は大丈夫そうだな。でもま、遅れは出るだろうから早く行かないと」

確認済ますと、入江くんは身体を起こした。


「・・・何?」

あたしは、起き上がった入江くんの横に座り込んだ。

「今日みたいな雪の日は、どうしてもあのバレンタインデーの日を思い出すよね」

「おまえ、雪積もると、いつもその話だな(※「琴子日記 雪の日」など参照 笑)」

入江くんがまたかという顔で苦笑する。

「入江くん、あのね」

「ん?」

入江くんの目の中に、あたしの顔が映っている。
あたしは、このあたしの姿を確認するのが大好きだ。
だって、入江くんがあたしをしっかり見てくれている証拠だから。
それだけあたしたちが、とても近い距離にいることがわかることだから。


「あのときも、今も、あたし、ずっと入江くんに恋しているよ」


入江くんの目がやんわりとした表情になる。
こんな優しい表情の入江くんを見ることができるようになったのも、たくさんのあたしたちの思い出が積み重なった結果だと思う。

そしてあたしは、とろけるような甘い優しいキスを受け入れた--。





**********

基本、私はロマンチストで乙女チックだな~とか思ってしまうような話でした(^_^;)
しかし毎度、短時間で書くためか(そのせいかはわかりませんが)雑な話で恐縮ですが(>_<)

今回、琴子ちゃんの妄想部分は、書いててとても楽しかったです~(*^_^*)

COMMENT

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2014/10/14(Tue) 17:13 | [Edit
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2014/10/14(Tue) 18:58 | [Edit
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2014/10/15(Wed) 22:33 | [Edit
コメントありがとうございます

たまちさま

今回もありがとうございます。
メッセージのはじめに直樹に対する謝罪、改心が書かれていて(そんな大げさなものではないですが 笑)、たまちさんったらあ~とふむふむ読み進めていって、ひっくり返りました。
まさか数行で全てくつがえすなんて!!?爆!「無理でした~~~」って!ええっ!爆!
でもどう読んでもらおうと元々全然ウェルカムです~♪(日本語?)ああ、おもしろい!
この頃から、入江くんも琴子ちゃんのことを好きだろうなとは思っていました。琴子ちゃんだけでなく、入江くんも琴子ちゃんと同じベッドで眠ったという事実は、すっごくお互いの仲を進展させる出来事でもありますよね。その延長上で、思いを込めて(?)手を繋ぐエピを入れてみました。ふふふ、少しずつ進展していく二人は、本当に大好きです。
本当にミラクルミラクル ルルルルル・・・ってそっか「ルルルルル」があったじゃん!?って思っていたら、そんなのないですよね!?ラミパスラミパス・・・爆!・・・やられました、最後まで。
2014/10/16(Thu) 13:45 | 千夜夢 [Edit
コメントありがとうございます

Yunさま

今回もありがとうございます。
乙女ちっく大好き★とのことで、安心してまたまたやっちゃいそうです~(*^_^*)
バレンタインのお話は、ちょこちょこ書いたりしていましたが、こういう琴子ちゃんの妄想ははじめてでした。原作でも、やたらと一人ドキドキしていた琴子ちゃんです。ドキドキ超えて、もんもんもしていたようにやはり思えますよね(笑)。
こういう夜を過ごしたからこそ、その後の甘い二人の夜につながっていくんだろうな~って妄想をふくらませてくれるイタキス。私も楽しんで書きました。
きゅんきゅんしていただき、とっても嬉しかったです(*^_^*)
2014/10/16(Thu) 13:48 | 千夜夢 [Edit
コメントありがとうございます

ねーさんさま

お忙しい中、ありがとうございます。
原作を完璧に読み込まれているねーさんさんですから、もう雪ときたらバレンタインをすぐに思い出して下さったのではないでしょうか?(*^_^*)琴子ちゃんの妄想を楽しんでいただき、ありがとうございます。
本人はいたって真剣でかなり緊張していたとは思うのですが、どこか琴子ちゃんの妄想はぷぷぷと笑いずれている感は否めません。琴子ちゃんにはこうであってほしいという感じで書いていきました。
妄想に尽きた感の話でもありましたが、ずっと読んでいたいって言っていただき嬉しいです♪
2014/10/16(Thu) 13:53 | 千夜夢 [Edit
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2014/10/16(Thu) 18:15 | [Edit
コメントありがとうございます

紀子ママさま

お忙しいときにもありがとうございます♪
お楽しみがあっていいですね~、私までつられてにやにやしちゃいますよ~(*`▽´*)青春万歳!
雪シリーズも覚えて下さっていてありがとうございます。琴子ちゃん語りは、おばさんの私も乙女に戻り(笑)、いつも楽しみながら妄想しています。
バレンタインのエピは、私も紀子ママさんに同意も同意!入江くんは、琴子ちゃんだから一緒のベッドで寝たんだと思います。これがある意味自然の成り行きだったのかもしれません。将来への予行演習的なものもあったかも?(笑)
原作でブーツで次の日登校している琴子ちゃんがあったので、そのままブーツにしたのですが、確かに入江くんのスニーカー履けばもっと萌えだったと思います。たまちさんが、返す口実もあるしとコメ下さいましたが、まさにそれもあって一石二鳥だったのに。
ちょっと無理矢理「積もる」をいろいろなものに繋げたと思っていたのですが、ロマンチックな感覚も味わっていただきうれしいです。
で、最後の一文で大爆笑!どこで来夢が!?(笑)もう来夢が、なんで頷いてるねん~~!?来夢は、どういう位置?爆!爆!爆!紀子ママさん、サイコ-です!
2014/10/17(Fri) 13:51 | 千夜夢 [Edit
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2014/10/24(Fri) 17:53 | [Edit
コメントありがとうございます

みゆっちさま

小刻みなお返事でごめんなさいね(^^;)
こちらにもありがとうございます。
琴子ちゃんの妄想は、本当に楽しんで書きました。
みゆっちさんらしい可愛らしさになったような気もしますよ♪楽しんでいただき嬉しいです♪
入江くんが怒るときは、どこか照れも入ってますよね(*^_^*)私もツンデレな入江くんが大好きです。また可愛い琴子ちゃんとツンデレ、ヤンデレな入江くんを書きたいなと思いました。ありがとうございます。
2014/11/04(Tue) 16:21 | 千夜夢 [Edit

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プロフィール

千夜夢

Author:千夜夢

こんにちは。
素敵なイタキスの二次創作をたくさん読ませていただき、ついつい自身も二次創作なるものを書いてしまいました。
ここは、私の超個人的な妄想話置き場です。

原作者様、出版社様等とは一切関係ございません。
私の勝手な妄想話であるため、原作のイメージを大切にされる方、二次創作が苦手な方、二次創作が理解できない方は、ご遠慮ください。
また、ブログ内の全ての文章・いただきものを含む画像等の無断転載・転用を固くお断りします。

まだまだ拙い文章しか書けませんが、以上の注意をご理解いただき、読んでもいいかな~と思われた方のみ、ご閲覧下さい。
よろしくお願いします☆



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