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Mama ②

2010.07.20 *Tue*

「琴子ちゃん!!」

あたしは702号室の部屋を勢いよく開けた。

「お義母さん」

ベッドの壁の方に向かって横になっている琴子ちゃんが、顔だけをこっちに向けて、ニコッと笑ってくれる。
よかったわ、まだ笑顔で、元気そう。

「どう?陣痛はどんな感じ?かなり痛い?感覚は?」

もう聞きたいことがいっぱいありすぎて、あたしは矢次早に質問する。

「陣痛はまだちょっといつもよりきつめの生理痛くらいなんで、なんとか我慢できてます。陣痛間隔は10分くらいなんですけど・・・・、まだ子宮口がほとんど開いてないらしくって・・・」

「そ、そうなの・・・」


それを聞いて、ちょっと心の奥底でひっかかる。
陣痛が等間隔できているのに、子宮口がほとんど開いてないっていうのは、あたしがお兄ちゃんを出産した時と同じだ。
そしてそれは難産になる兆候だと・・・あたしはお兄ちゃんの出産の時にはさんざん医師に言われたものだ。
でも結局は、最後はしっかり子宮口も開いて、あたしは普通分娩で安産だったから・・・うん!琴子ちゃんだってこれからよ!!
琴子ちゃんだって、これからきっといい具合にお産が進行していくはずだわ。
そうよ。
杞憂にすぎないことは、琴子ちゃんには絶対言わないでおきましょう。


「琴子ちゃん、何か食べた?」

「いやまだ・・・です。もうすぐ朝食の時間だって聞いたので」

「じゃあ、朝食はしっかり食べてちょうだいね。これからもっと陣痛きつくなったら、食事も大変だから、食べられる時に食べて、体力を養っておかないとね」

「あ、そうなんだ。あまり食欲なかったけど、やっぱり今のうちに食べておくほうがいいんですね?」

「そうよ。そう。お産は体力勝負でもあるんだから。・・・・どうしたの?痛い?」

「あ・・・ちょっと、また陣痛きたみたいで」

「琴子ちゃん、少し横向いて!」


あたしは琴子ちゃんの腰に手をやって、思い出してみる。
確かこのあたり、このあたりを押しながらさすってあげると、かなり痛みが和らいだはず。

「ああ・・・」

「どう?痛み同じ?」

あたしは琴子ちゃんの腰を掌に力をこめて押しながらさする。
あたしもお産の時に、助産師さんからこれをしてもらって、本当に楽だったから。

「あ~~、いいです~、痛みがましになります~!」

「ホント?よかったわ。陣痛くる度にしてあげるから、気持ち的にも少し楽になるでしょう?」

「はい・・・はあ・・・かなり楽です・・・あ、だいぶんおさまってきました」


ふう。
結構、この腰を押すのも重労働だわね。
でも、これで琴子ちゃんが少しでも楽になってくれたら、もうそんなうれしいことないから。
琴子ちゃん、あたしがんばってお手伝いするから、これからの長丁場、一緒にがんばっていきましょうね。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・



お昼が過ぎて、琴子ちゃんの陣痛も朝よりもきつくなってきたらしい。
なんとか昼食は半分くらいは手をつけたけど、後はこれ以上食べると吐きそうだと言うので、それ以上は無理にあたしも勧めなかった。

陣痛は等間隔で順調にきているけど、昼になってもまだ琴子ちゃんの子宮口はやっと1センチくらいにしかなっていないとさっき助産師さんに聞いた。
あたしも少し不安になってくる・・・。


「まあ、まだまだこれからだから・・・」

少し苦笑しながら助産師さんがあたしたちに声をかける。
子宮口の開きが悪いことに少し不安を持ちながらも、希望をもたなくちゃと思わせる助産師さんの言葉に、あたしはぐっと頷いた。



「琴子」

ふいにドアのノックとともに、男性の声がする。

「お父さん!」

「相原さん」

まだ生まれそうにないので、家には連絡してなかったけど、相原さんが駆けつくれた。


「奥さん、すみません。琴子にずっと付き添ってもらってて・・・。遅くなりましたけど、これよければ」

「まあ、お弁当?相原さんが作ってくださったの!?」

「はい。もうわしにはこれくらいしかできなくて・・・琴子には病院で食事が用意されてるでしょうが、奥さんには何もないのかと思いまして。一応昼と夜の分とちょっとした夜食用も用意してきました。つまんでやってください」

へこへこと腰を曲げて、いつものように礼儀正しく相原さんが頭を何度も下げる。


「琴子、どうだ?順調か?」

「うん、なんとか。お父さんも忙しいのに、来てくれてありがとう。お店大丈夫?」

「ああ、仕込みもすましたし、この時間は少し時間があるんだ」

「よかった・・・・・あ・・・また・・・」

琴子ちゃんが相原さんを見て少し起こしかけた身体を両手で支えながら、顔を渋らせる。

「陣痛きたのね。琴子ちゃん、ゆっくり横になって」

琴子ちゃんに少し手を貸してあげて、ゆっくりと琴子ちゃんを寝転ばせる。
そして少し身体を傾かせて、そしてまた腰のあたりをぎゅうと力を入れて押しつけながらさすってあげる。


「琴子ちゃん、しっかり呼吸してね。赤ちゃんに酸素をたくさん送ってあげるためだからね」

「は、はい・・・ふー。はっ、はっ、ふーーー」

あまり大きな声は出さないけど、琴子ちゃんの顔の表情は朝から比べると、やはりかなり陣痛の痛みも増しているように感じる。
まだまだ子宮口は1センチだから、いったいいつまでこの苦しみが続くのか・・・。
あたしもだんだん腕の感覚がなくなっていきながらも、こんなに健気にがんばっている琴子ちゃんのために、とにかく気持ちを奮い立たせて、琴子ちゃんの腰をがんばってさする。


「ふう・・・。お義母さん、ありがとうございます。遠のいていきました」

「はあ、よかった。今のうちにお水でも飲んでおくといいわよ」

「奥さん」

「あ、はい」

思わず相原さんの存在を忘れていたわ。


「わしは、これで・・・店もあるので、申し訳ないですが帰らせてもらいます」

「ええもうですか!?」

そういうや否や、もうドアを開けて出て行こうとする相原さんを追って、あたしも廊下に飛び出した。
そしてドアの前で話すのもなんなので、近くのジュースなどの販売機のある小さなスペースで相原さんと少し立ち話をする。



「すみません・・・。何もかも任せっきりで」

「いいんですよ!あたしはこうやって琴子ちゃんの出産に立ち会うこともずっと楽しみにしてきたんですから」

「わしはもう・・・。情けないですが、あんな辛い琴子の姿を見ることができなくて・・・」

「相原さん・・・」

相原さんの切ない顔を見ると、男親のなんとも言えないやるせない気持ちがひしひしと伝わってきた。


「でも奥さん!琴子、あんなに苦しそうな顔をして、お産までまだまだみたいですし、大丈夫ですかね!?」

その相原さんが、今度は少し泣きそうな顔をしてあたしに問いかけてくる。

「いや・・・、悦子の時も・・・すごく苦しそうでしたけど、当時、わしはお産ってそんなもんだとばかり思っていて・・・、あまり気に掛けてやらなかったんです。でも琴子を生んでから、悦子の産後の肥立ちはあまりよくなく、お産が関係してるわけではないと思うのですが、数年後には悦子が・・・・。そう思うと、さっきの琴子を見ていると、なんだかとてつもなく不安が溢れてきて・・・。琴子、琴子は大丈夫でしょうか?」


いつもは男っぷりのいい相原さんが、泣きそうな顔であたしをずっと見つめている。
早くに奥さんを亡くして、寂しい思いをしながら琴子ちゃんを男手一つで育ててきた相原さん。
一人娘のお産も、悦子さんのこととオーバーラップするのかもしれない。
琴子ちゃんの苦渋の顔を見ることは、悦子さんをも思い出し、いろいろな思いが重なり、本当に辛く不安な気持ちになるのだということはよくわかる。


「相原さん、大丈夫ですよ!!」

あたしは、いつになく小さく見える相原さんの手をとって、ぎゅっと握る。

「お産はみんなあんな感じです。女性はみんなああして子どもを生んでいくんですよ!あたしもそうやって二人産んだんですから。大丈夫!琴子ちゃんはとても強い子です。乗り切ってくれますよ」

「奥さん・・・」

「あたしがついていますから、安心してください」

本当はあたしも琴子ちゃんの痛く辛そうな顔を見ると、自分のお産の時よりも不安で胸が押しつぶされそうな気がするんだけど・・・、でも相原さんの心中はもっと複雑だと思い、必死で説得するように言葉を紡ぐ。
そして相原さんの肩をぽんぽんと叩く。


「今日もお忙しいんでしょう?あたしがついてますから、どうぞお仕事に戻ってください。琴子ちゃんはあたしの娘でもあるんですから、しっかりあたしが守りますから」

「ありがとうございます。もうその言葉だけでどんなに、どんなに心が安まるか・・・・・。今日は前々からご贔屓様に還暦のお祝いの席を予約していただいてて・・・、夕方以降はちょっと病院に顔を出すのが難しいんです。本当にこんな時に男親は何の役にもたちゃしない。奥さん、よろしくお願いします」

相原さんが、頭を深々と下げてなかなか顔をあげない。
もうその姿から、相原さんの気持ちがすごく伝わってきて、あたしも胸がいっぱいになる。



「相原さんごめんなさいね」

「え?いやなぜ奥さんがそんな・・・」

「本当にお気持ちがいろいろとわかりすぎるくらいわかります。本当はここでハグでもしてさしあげたい気持ちでいっぱいですけど、ここはなんと言っても古くさい日本の病院。生まれてくる赤ちゃんの父方のおばあちゃんと、母方のおじいちゃんがおかしな関係!?なんて変な噂をたてられたら困りますから・・・。ここは握手だけで・・・お許し下さいね・・・」

「奥さん・・・『ハグ』ってなんですかね?」

「抱っこです」



相原さんはなぜか変な汗をたらりと流して固まった。
慣れない外来語に戸惑われたのかもしれないわね。



「お、お、奥さん!!そ、そんな滅相もない!!///」

相原さんは急に身体を大きく揺らすと、真っ赤になって、あたしが握っていた手を大きく引き離した。


「こ、こ、琴子のことを、よろしくお願いします!!」

そしてもう一度大きく頭を下げて、相原さんは足をもつれさせながら病院を後にした。



「あんなに足をもつれさせて・・・琴子ちゃんのことが心配で仕方ないんですね・・・」

あたしは相原さんの後ろ姿を見ながら、思わず涙を流し、ハンカチを噛みしめた。




**********

このお話を「地味」と言っていた私の言葉を思いだしていただけたでしょうか(^^;)
今回のように、たんたんとお話繋がせていただいていきます。

しかし、自分で書いていながらも「ハグって何さ!!?爆!」って、紀子ママにつっこんでしまいました(*`▽´*)
ついつい紀子ママが乗り移ったように書いてしまったラスト部分でした・・・。



COMMENT

お見事(拍手)
 こんばんは・・・。 タイトル通りです。
ママって 行動派であっちこっちへと飛び回って 
じっとするのが苦手で直ぐ口は機関銃(言いすぎました(笑)) と思ってたのに 今回は別人でないですかぁ 自分の事思い出したり・・・。 冷静なママもあるんだぁと思っちゃいました。
  
by 吉キチ
2010/07/20(火) 20:37 [Edit
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
by
2010/07/21(水) 00:53 [Edit
管理人のみ閲覧できます
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by
2010/07/21(水) 13:01 [Edit
コメントありがとうございます(*^_^*)
吉キチさま

こんにちは。冷静な紀子ママに感じてもらえたんですね♪紀子ママは、とにかく「琴子ちゃん命」的なイメージで、最大限の協力をしてくれると信じてのこの場面のお話を考えました(^^)いつも全力疾走してそうな紀子ママを、がんばって書いていけたらいいなと思ってます(*^_^*)


りきまるさま

こんにちは。紀子ママは本当に琴子の最大の味方で、琴子にいっぱいの愛情を与えてくれる人物ですよね。こんなお姑さんは世の女性の夢の夢で(笑)、そこがまたイタキスの魅力の一つでもあると私も思います。ゆっくりといろんな登場人物と絡めながら、進めていこうと思ってるお話ですので、時々ですがUPされてたら、その場面場面を楽しんでいただけたらありがたいです(*^_^*)


ぴくもんさま

こんにちは。最初の紀子ママの登場がわりと派手でしたので(笑)、今回はそれとはまた違い、献身的に琴子の世話をする優しいお姑さんって感じになると思います。ホント、琴子は幸せ者です。タイトルの「Mama」は三つの意味をもたせています。それも頭に入れてこれから読み進めていただけたらうれしいです(*^_^*)夏休み突入で・・・本当にPCの前にゆっくり座ることができませんね(^^;)創作って勢いも大切ですから、あまり離れないように気をつけたいと思います~・・・(^_^;)
by chan-BB
2010/07/22(木) 16:46 [Edit
拍手コメントありがとうございます(*^_^*)
くーこさま

こんにちは。「ハグ」に反応していただきありがとうございます!!(^^)でも紀子ママって、変な意味でなく、気持ちを込めて相原パパをハグしてあげたいって気持ちになりそうな気がしませんか?(笑)紀子ママにとって、大事な大事な琴子ちゃんの出産ですから、この後も活躍してもらいたいと思います♪


繭さま

こんにちは。私も付き添い禁止の病院だったので、旦那はおろか、実母はのんきに旅行に行ってましたからね(笑)。ホント、一人で産みましたよ。だからこのお話は、いいな~と自分で思いながら書いています(^^;)繭さんのわけのわからない怒りってのも、笑えるけど、すごくわかりますよ!今回は紀子ママの働きぶりに注目していただきたいので、相原パパへの対応も、陣痛に耐えてる琴子の代わりにがんばってもらいました。「ハグ」はもう、突拍子もない紀子ママの、変な意味ではない思いやりのようなものだと思っていただけたらうれしいですね♪まだまだ続きそうですが、がんばりますね☆
by chan-BB
2010/07/22(木) 16:50 [Edit

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千夜夢

Author:千夜夢

こんにちは。
素敵なイタキスの二次創作をたくさん読ませていただき、ついつい自身も二次創作なるものを書いてしまいました。
ここは、私の超個人的な妄想話置き場です。

原作者様、出版社様等とは一切関係ございません。
私の勝手な妄想話であるため、原作のイメージを大切にされる方、二次創作が苦手な方、二次創作が理解できない方は、ご遠慮ください。
また、ブログ内の全ての文章・いただきものを含む画像等の無断転載・転用を固くお断りします。

まだまだ拙い文章しか書けませんが、以上の注意をご理解いただき、読んでもいいかな~と思われた方のみ、ご閲覧下さい。
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